女性もきちんと主張を
男女平等も大切にしてきたテーマのひとつだ。
『一粒の麦 荻野吟子の生涯』(2019年、出演=若村麻由美、山本耕史ほか)で取り上げたのは、日本で初めて医師になった女性。荻野は夫から性病を移されたあげく、「子どもを産めない嫁はいらん」と家を追い出された。女性が医師になる道が閉ざされていた時代に、粘り強く学び続けて医師になった荻野のことを多くの人に知ってもらいたいと映画化を決めた。医学部入試で女性が差別されていた問題が明らかになった翌年に完成した。
『われ弱ければ 矢嶋楫子伝』(2022年、出演=常盤貴子、石黒賢ほか)では酒乱の夫に離縁状を突きつけ、婦人参政権運動などに尽くした女性を映画にした。作品の中で、矢嶋は次のように語る。
運命とは、命を運にあずけることです。
大切な命を運に任すのではなく、
これからの女性は、使命を持って生きてください。
使命とは、命を使うことです。
自分の命は、自分で使うのです。
これは、山田さんの想いでもある。
「女性が男性に依存せず、きちんと主張してほしい。素手と素手でけんかしたら力の強いほうが勝つけど、強者だけで国を作ると戦前のように軍国主義になるよね。女性が主張して戦争に反対すれば、戦争はできないはずだと思う」
最近、街中で男性が幼い子どもを抱いたり背負ったりしているのを見ると、嬉しい気持ちになると話す。「典吾さんはお茶も入れないし、どっかり座って何もしなかった。いまの男の子を見ると、良い教育だなと思いますよ」
山田さんが大切にしてきたテーマは、反戦と男女平等に加えてもうひとつある。それが障害者福祉だ。長女が幼い頃にわかった障害がきっかけだった。
(後編に続く)
京都生まれ。小学生の3年間をペルーで過ごす。大学院修了後に半年間バックパッカーで海外をめぐった後、2006年に朝日新聞社入社。青森総局、東京社会部、文化くらし報道部などを経て2023年に退社。関わった書籍は『「小さないのち」を守る』『Dear Girls』『平成家族』『調理科学でもっとおいしく定番料理』(いずれも朝日新聞出版)。ヨガインストラクターとしても活動。