「教え子」であれば処分の根拠に

アメリカでは、教員が担当している学生と付き合うことは、たとえ両者が合意していたとしても禁じられている。教員は学生の評価権をもっており、圧倒的に権力をもっているからである。また他の学生に対して、公平性が保てないということもあろう。

私もかつて学生から、「ある先生が、あきらかに自分と同じ授業に出ている特定の学生と付き合っているようだ。その授業に出るのが苦痛だ」という訴えを聞いたことがある。周囲に影響が及ぶ点で、「環境型セクハラ」にもなり得ると感じた。

また、両者が合意していても、教室で学生に先生が性的な眼差しをむけたという事実に、深く傷つく学生もいる。

「他大学の未成年ではない学生」との関係は問題なのか

ただ宮台氏の場合、女子学生との関係自体は倫理的に、また年齢の力関係を考えればいかがなものかとは思うが、処分の根拠とはならないのではないかと考えている。なぜなら、女子学生は宮台氏の大学の学生ではないからだ。宮台氏はこの学生と、利害関係はない。

しいて言うならば、もしこの学生が大学院生であれば、学会など、大学の外で力関係が生まれることもあり、問題となる可能性はある。大学院生の場合は、教授とはある意味上司・部下のような上下関係になることもあるため、ハラスメントの問題は深刻になりがちだ。しかし、宮台氏のケースはそれに当てはまらない。

また20歳は、まだまだ未熟なところがあるかもしれないが、成人年齢を超えており、処分の根拠とするには難しい。

処分には明確で明示的な根拠が示される必要がある。

確かに宮台氏と女子学生の間にある社会的な権力差、力関係を指摘することは可能である。しかし、もしも学生との関係であることが問題であるとするならば、「教員という立場の者と、学生という立場の者の関係が疑われた場合は、すべからく処分の対象とする」という合意を、まずもって形成しておく必要があると思われる。

学生にもさまざまな年齢の人がおり、何の利害関係もない場合の恋愛関係までをも禁じるのは、現実的には困難であると思われるが。