──「血圧」や「コレステロール」の値については気にかけている人も多いはずですし、健診の受診率も上がっていると聞きます。それでも、いまだ生活習慣病が大きな問題となっているのは、なぜでしょうか。
丸山 生活習慣病の方に対して食事指導を行う機会がありますが、そこで驚かされるのは、「自分の病態にまったく危機感を抱いていない」ということです。血圧やコレステロールがどれだけ危険な数値を示していようと、むしろ「自分は健康である」という認識をもっていることさえある。具体的な痛みや苦しさをともなうケガや病気でないため、自身の健康が損なわれているという危機感を抱くのは難しいのでしょう。
ある興味深いデータがあります。日本肥満学会が実施した調査「内臓脂肪蓄積例における生活習慣上の特徴」では、メタボリックシンドロームの方々の行動パターンが浮き彫りとなっています(図1)。「アイスクリームなどの甘いものが好き」で、「緑黄色野菜が嫌い」。しかも1回の食事の時間が30分以上ということから、「満腹になるまで食べ続けてしまう」ことも窺えます。体重こそどんどん増えますが、痛くも何ともない。しかしその裏側では、高血圧に拍車がかかり、血中のコレステロールが異常になる。リスクが高まっているということを意識できなければ、生活習慣病の減少はなかなか厳しいと思います。
根本的な問題がどこに
あるのかを探ってみる
──では、自分の体をうまく管理していくためには、何から始めればよいのでしょうか。
丸山 やみくもに食事の量を減らしたり、運動を始めたりする前に、「根本的な問題はどこにあるのか?」を探ってみることをお勧めします。食べ過ぎて太ってしまう。ならば、「いつ、どういうときに食べたくなるのか」「自分はどのような環境で過ごしているのか」を探ってみると、少しずつ核心に迫っていけるのではないでしょうか。
例を挙げてみますと、ある方の場合は、「いつも自宅にチョコレートの買い置きがある」という点に注目しました。奥様が習慣的に購入していたようなのですが、実はここに食べ過ぎの秘密が隠されていたのです。家族の協力によって買い置きをなくし、「食べない環境づくり」に成功しました。
また、ストレスに起因する食生活の乱れもあります。どうしても、間食をやめることができない。なぜ食べたくなるのかを考えてみると、職場での人間関係によるストレスに思い当たったそうです。そこで上司に相談してみたところ、徐々にギスギスとした空気が緩和されていきました。それにともない、不必要な間食がなくなっていったそうです。
ビジネスパーソンなら、交渉の場の雰囲気などに応じて、臨機応変に押したり引いたりするでしょう。それと同じように、自分の健康に対して害を与える存在を見極め、「うまくかわす」ためのアイデアを練ってみること。これが、生活習慣を正しい方向へと導く近道につながります。