大事なのは食材の選択と
適度なお皿のサイズ

──具体的な食事の内容としては、どのようなものを摂取するのが適切なのでしょうか。

丸山 理想的には、米やパン、麺類などの炭水化物である「主食」と、肉・魚などのタンパク質である「主菜」を肉より魚や大豆を多めに。そして煮物やおひたしなどの野菜類である「副菜」。この3種を適度な分量かつうす味で食べるのが、大原則です。

このうち、とりわけ外食の多い方は食物繊維が不足しがちなので、ぜひ積極的に野菜料理を食べるよう、心がけてほしいと思います。政府が主導する、21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」では、野菜の摂取目標量を「1日に350グラム」としています。これに海藻やきのこ類、コンニャクなどをプラスすれば、さらに効果的でしょう。

野菜350グラムといっても、生のままだと「そんなに食べられない」と感じるかもしれません。葉物は熱を加えることによってかさが減りますから、3食に分ければ摂りやすいと思います。そうした意味でも、「1日3食」は重要なのです。ちなみに食事1回あたりの量の目安として、「小鉢2つ分」をイメージしてもらうと分かりやすいでしょうか。

食材の内容もさることながら、もう1つ、単純ですが食べ過ぎないためのコツがあります。それは、「皿のサイズを大きくし過ぎない」こと。スペースに余裕があれば、その分盛りつけたくなってしまうのが心情というもの。それを小さくすることで、適切な分量をキープしていくよう習慣づけていく。意外に有効ですから、試してみてはいかがでしょうか。

万が一の際に、どんな
損失が発生するか

───いざ表面化したときには、かなり症状が悪化していた。そんな事態にならないよう、普段からどのような備えを心がけておくべきでしょうか。

丸山 もし体を壊してしまえば、さまざまな影響があるということを忘れないようにすることが大事です。それこそ入院ということにでもなれば、多くのお金や時間を失うことになりますし、強いストレスにもさらされます。また、企業の立場になってみれば、貴重な戦力を失うことで、何らかの損失や出費が発生してしまうかもしれません。

でも予防のための行動を起こしていれば、そんなトラブルを避けられる可能性も高まります。たった「1日」の時間をつくり、人間ドックでチェックしてもらうことで、未然に病の芽を摘み取る。あるいは半日を使って、病院で専門医の指導を受ける。先ほども触れましたが、「自分は健康である」という思い込みから、多くの人はなかなか病院や健診に行きません(図2)。その考え方を改めることで、早期発見、早期治療を実現してもらいたいと思います。血圧の変化や、コレステロールのバランスが、いまどうなっているのか。それを正しく知るには、やはりしかるべき機関で調べなければ明らかにならないのですから。

とはいえ、体質やストレスの耐性は人それぞれですし、思いがけない発病は誰にとっても起こりうることです。皆さんのなかには、経営者や管理職として、重い責務を負っている方もいらっしゃるでしょう。「健全な職場」という観点で考えたとき、「上司が率先して健康管理を行う」ことは、非常に良い相乗効果を生むはずです。それが互いの健康を気遣うきっかけになり、より良い働き方の実現にも近づけるのではないでしょうか。社員の健康は企業を守り、利益にもかかわる。そう私は考えています。

──最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

丸山 周囲と連携しながら進める取り組みも大切です。ただ、やはり健康は人に守ってもらうものではなく、自分の意思で守るもの。健康な体があるからこそ働いたり、何かを楽しんだりできる。その当たり前の原点を、見失わないようにしてください。