「発情BOX」という夢
やっぱり改めて、男性が男性にねぎらいの声をかけて落ち着かせる、というのが理想だなと思ってしまいました。攻撃的で正義感で、というより、「おまえ大丈夫か」と心配する姿勢。
痴漢犯罪の研究では「痴漢加害者は加害している最中、勃起していない(性欲は関係ない)」という結果もあります。
しかし私が見た女性の臀部に手を伸ばして触ろうとしていた痴漢は、前向きに棒を入れてるみたいにズボンが突き出していて勃起しているのがしっかりと目視できました。電車の座席に座って、立ち上がった陰茎をズボンの上から手でこすりながら向かいの女子高生を見ていた男子高生も見たことがあります。私が見た痴漢はだいたい勃起していました。
それなら、駅のホームに簡易トイレみたいな「発情BOX」みたいなものを設置しちゃってもいいくらいだと思っていました。「女子を触らないで済むのなら、その中でどうぞ一発射精してきてください」という意思表示を鉄道会社がしてくれてもいいんじゃないか、と。
そんなものが駅にあったらおかしいし、現実的な話ではないことは分かっています。
だけど、電車の中で子どもや女性が、ワケのわからない見知らぬ男の発情を一人で受け止めている、そんな環境のほうが、よっぽどおかしくないでしょうか。
だから「発情BOX」という「痴漢しそうな人は中で射精しましょう」というBOXを設置する。そんなBOXがあれば、脳内ストーリー発動状態になっている男性に男性たちも「ちょっと、BOX行ってきたら?」と声をかけやすいのではないか、とにかく加害をさせなければいいんだから、それが1番平和なのではないか、と私はこの13年、夢想していました。
男性たちが手と手を取り合う世界
だからロバート秋山氏の「Are you KENZEN?~僕らの魔法~」を聴いて、本当に衝撃を受けたのです。
男性が男性の身を案じて、声をかけている。
女性に失礼なことをしてはいけないというよりは社会的失墜をしないために、という目的が強めの歌ではあるものの、その理由での訴えであることも正直でいいじゃないか、と思いました。
とにかく時代はここまで来たんだ、と打ち震えたのです。
秋山氏はひざまずき「一度抜くだけで食や街に集中できる FU~WU~ こんなに不思議な魔法 他にないでしょう!」と熱唱しています。
確かに、未成年の男子たちって「デートの前に一発抜いとけ」と言われてませんでした? 雑誌とかテレビとかで見た記憶があります。「デートに集中できるから」「焦ってガツガツしないで済むから」みたいな。
成人した男性、中高年の男性も同じなんじゃん!
男性たちがつながって、手と手を取り合って、自分たちの身を守るためでもいいから、気をつけ合う社会が広がったらいいなと思います。
1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。