吉本興業という大企業も松本を切り離すつもりではないか

吉本興業はここにきて方針転換し、松本人志を単体で切り離そうとしているようにも見える。これは清算というよりはむしろ、他の芸人に累が及ぶことを恐れてのトカゲの尻尾切りではないか。

折しも朝ドラ「ブキウギ」では、吉本興業をモデルにした村山興業の黎明れいめい期がいきいきと描かれた。当時誇っていた「会社と芸人の家族のような関係」が、もしも性加害や暴力の温床となってしまったのなら、そして暴走するタレントに物申せない人間が幹部に上り詰める仕組みをつくったのなら、なんと不幸なことだろうか。

これからのお笑いのためにも、芸能の世界を目指す若者のためにも、ぜひこの不祥事については、吉本興業とダウンタウン松本人志、そして関係する芸人・放送作家たちに説明責任を果たしてもらいたい。自分の言葉で語ってもらいたい。彼らはその「言葉」を武器にして、切磋琢磨せっさたくまし、あの地位まで上り詰めたのだから。

藤井 セイラ(ふじい・せいら)
ライター・コラムニスト

東京大学文学部卒業、出版大手を経てフリーに。企業広報やブランディングを行うかたわら、執筆活動を行う。芸能記事の執筆は今回が初めて。集英社のWEB「よみタイ」でDV避難エッセイ『逃げる技術!』を連載中。保有資格に、保育士、学芸員、日本語教師、幼保英検1級、小学校英語指導資格、ファイナンシャルプランナーなど。趣味は絵本の読み聞かせ、ヨガ。