松本人志の性加害疑惑とスーパーフリー事件の類似性

だが、どの芸人も、著名人も、ファンも、性加害疑惑自体は否定しないのだ。
 後輩芸人に好みを詳細に指示し、飲み会と称して女性を集め、直前で会場を飲食店からホテルに変更、だまし討ちのようにベッドルームに入らせて、拒否されると恫喝・激怒という報道内容に対し、誰も「そんなひどいこと、松本さんがするはずない!」とは言わない。性加害があったとしても偉大な芸人なのだから許されるべきだ、と暗に示しているのだった。

この松本人志に関する報道内容がもし事実なら、2003年に発覚した「スーパーフリー事件」と構図が似てはいないか。内部にヒエラルキーを持つ男性集団が、社会経験の浅い女性を甘言で集め、密室状態に追い込み、同意なく性的な加害を行う。やり方がシステム化、ルーティン化されており、常習的だったらしい点も共通する。

キャバクラやクラブといった接客業、またいわゆる風俗などの性的サービスに比べ、こういった私的な「上納システム」(『週刊文春』より)が、その空間にいる女性にとってどれほど危険か、男性には想像しづらいかもしれないので、少し説明したい。

接客業や風俗業も、働く女性にとってリスクはある。しかし、トラブルがあればレフェリーのように止めに入る店長やオーナーがいる。店にはルールとマナー、そして客同士の「評判」があり、遊び方が汚い客は軽蔑され、ひどければ「出入禁止」のレッドカードが出る。ある程度の歯止めが利くのが、プロの「夜の世界」なのだ。

私的に作った密室で性行為を強要する汚いやり口

お笑い界のレジェンド、故・志村けんの夜遊びは有名だった。だが彼はあくまでも「クラブ」という社交性のあるオープンな場を楽しむことで知られていた。遊び方が紳士的だったからこそ、悪評も出なかったのだろう。

対して、報道がもし事実なら、松本人志はプロからはなるべく遠い、素人の女性を追い詰めることを好んでいたようだ。後輩に命じて「私的につくりあげた密室」では、彼が王様である。女性たちは被害を受けても、訴える先もなく、泣き寝入りするしかない。

もし事実なら、これは吉本興業ほかの芸人たちが数多く関わってきた、組織的、計画的、また長期的な性犯罪となるのかもしれない。これを機に徹底的に調査し、関係者を洗い出し、再発防止を図ったほうがよい。アメリカのエプスタイン事件や、韓国のキム・ギドクの疑惑のように、規模の大きな、根深い事案となる可能性も秘めているのだから。