小説のエンディングが示唆するもの

政治の場では、長年の懸案だった皇位継承問題が、中途半端なものにとどまりそうな気配が強いものの、近く一応の決着を迎える可能性が見えてきた。それによって皇室典範のこれまでのルールが改まり、内親王・女王殿下方が望まれるならば、ご結婚後も皇族の身分を引き続き保持されることになるはずだ。

それをもう一歩進めて、世界の普通の立憲君主国がどこも女性君主を認めているのと同じように、わが国でも「女性天皇」を可能にするところまで行き着くかどうか。今のところ残念ながらまだ不透明だ。

先に紹介した、中学1年生当時の敬宮殿下のファンタジー小説の締めくくりは、次のようになっていた。

「私は海の生き物たちの生きる活力となっていったのである。……今日も愛子はどんどんやって来る患者を精一杯看病し、沢山の勇気と希望を与えていることだろう」

じつに示唆的であり、将来の女性天皇の実現に向けて、何やら予言めいた一節ではあるまいか。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録