厳しい財政事情から奇妙な大学無償化策が生まれた

この政府の多子世帯の大学無償化ですが、よく考えると2つの疑問が出てきます。

まず1つ目の疑問は、「そもそもなんで多子世帯に限定して無償化を行うのか」という点です。おそらく、多くの人々がこんな奇妙な形の政策ではなく、「第1子目からの大学無償化」を求めていると考えられますが、それが実現しないのはなぜなのでしょうか。

この答えは、政府が直面している厳しい財政事情です。

日本の財政事情は非常に厳しく、国の歳出のうち、税収で5割程度、国債で4割強をまかなっています。借金の比率が高く、新たな政策を実施する際に慎重にならざるを得ません。

また、日本の高齢化は新たな局面に差し掛かっており、来年の2024年には65歳以上の高齢者人口比率が3割を超え、再来年の2025年には団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者となります。これによって医療・介護の社会保障費のさらなる膨張が見込まれており、日本の財政を悪化させることが危惧されています。

このような状況下で「第1子目からの大学無償化」といった巨額の財源が必要となる思い切った子育て支援策を実施するのは難しいのです。

見出しに踊る「かさむ教育費」の文字
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何とかひねり出した労作ではあるが本気度が見えない

おそらく、今回の政策は厳しい財政状況下でもより踏み込んだ子育て支援策を実施したいとの思いから、なんとか考え出された労作なのではないかと考えられます。限られた財源を振り分けるのであれば、最も子育ての金銭的負担が大きい層を対象とせざるを得ません。この結果、多子世帯がターゲットとして出てきます。

多子世帯の大学無償化を持続的に行いたかったものの、増税しないという政府の方針のもとではそれも難しく、何とか予算規模を削るために、3人以上子どもがいても扶養されている子どもの数が2名となった場合、無償化の対象外とせざるをえなかった可能性が考えられます。

このように今回の大学無償化は、政策担当者の苦労が垣間見られる内容です。しかし、残念ながら多くの人々にとってわかりにくく、不満をもたれる結果となってしまったのではないでしょうか。