50代、60代からでも3000万円貯められる

投資の話をすると「60歳だからもう間に合わない」と言う方もいます。資産形成は若いうちからとお勧めしましたが、50代、60代からでもこれから20年、30年は運用できるので決して遅くはありません。

2024年1月から、非課税保有期間が無期限の新NISAがスタートします。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが併用ができ、それぞれ年間120万円、240万円、合計年間360万円の投資が可能になります。非課税保有限度額は、全体で1800万円です。

仮に一定の投資信託で初期投資を100万円入れて、毎月の積立金額3万円を年利7%で20年運用すると3000万円ほどたまる試算になる。60代でも十分に資産を増やせるのです。運用期間を短くするとしたら、3万円のうち2万円を投資信託に、1万円を成長性の高い個別株にすることでリターン率を上げていくことも可能です。ただし、個別株に投資するには相当勉強しなければなりません。

投資の勉強には各社のセミナーや専門書もさまざまありますが、例えば、新聞や新聞のWEB版は、日々の最新情報が入手できるので、毎朝の習慣として読んでおくといいでしょう。新聞を読んで、そこから何を発見するかどうかは本人次第。経済情勢や世の中のトレンドがわかると、成長性の高い企業や銘柄に興味が湧いてくると思います。

30年くらい前の話ですが、アメリカで高齢の未亡人が投資で成功して話題になりました。その女性は投資が趣味で、ご主人が亡くなった後は一人暮らしをしていたので、毎日新聞を読んでは気になる記事をチェックしていたそうです。ふだんスーパーで買い物をするときは、自分の目線の高さにある商品を見ることで何が売れているかを確認します。手に取りやすい場所に売れ筋商品が置かれているので、実際にそれを買って食べてみるのです。自分がおいしいと思えば、その企業が上場しているかどうかを新聞で見て、株式を徹底的に調べたうえで良さそうだと思ったら、そこの株を買っていく。そのやり方で、毎年13%くらいのリターンを出していたという話でした。

つまり、身近な暮らしの中にも情報は豊富にあるということです。自分が見たり、使ったり、生活に密着しているものであれば、良いものかどうかを判断できる。人に勧められるまま、よく知らないものに投資するのは失敗しがちです。世の中に出ている商品やサービスなどいろいろ見ていると、肌感覚が研ぎ澄まされ、意外と身近なところに株価が上がる銘柄があることもわかると思いますよ。

新聞を読む男性の手元
写真=iStock.com/seb_ra
※写真はイメージです

例えば、コロナ禍が落ち着いて外国人環境客が増えている状況では、インバウンドの需要が高まっているファミリーレストランなどの飲食店チェーン、生活雑貨の量販店なども狙い目かもしれません。一方、長年人気の高配当銘柄の中でも、多くの人たちに新NISAで個別株を買ってもらえるように、少額で分割されたものがあります。これまではまとまった資金が必要でなかなか手が出せなかったNTT株は、1:25に株式分割をしたので1株170円(2023年12月14日現在)、最低購入価格(1単元=100株)は1万7000円で株主になれるようになりました。こうした個別株を少額からいろいろ買ってみるのもやり方の一つですね。

あとは投資の相談ができる相手がいるかどうかが大事。信頼できる相談相手がいれば、怪しい話が来たときに「これはどう思う?」と率直に聞けますが、多くの人は自分だけで判断してだまされるケースも後を絶ちません。相談できる相手は投資経験者が望ましいでしょう。金融機関で相談する場合は、自社の金融商品を一様に勧められることがあるので、それに流されないように自分も知識をつけておくことが必要です。