控除をしないと保育料、児童手当、高校無償化に影響が
年末調整や確定申告が大切なのは、払いすぎた税金が返ってくるということだけではありません。年末調整や確定申告によって計算された所得額によって、保育園の保育料や児童手当の所得制限、高校無償化の支援金の金額にも影響が出てくるのです。
児童手当については所得制限撤廃が議論されていますが、2023年11月現在では、児童手当は所得制限限度額未満であれば0~3歳未満は一律1万5000円、3歳~小学校修了まで第1子・第2子は1万円、第3子以降は1万5000円、中学生は一律1万円が支給されます。
しかし、所得が所得制限限度額以上になった場合、一律5000円の特例給付になってしまいます。また、所得上限限度額以上になった場合は特例給付も受けることができません。
しっかり控除を申告しなかったために所得制限限度額を超えてしまったら、小学生の子どもと3歳の子がいるご家庭の場合、月2万5000円もらえるはずが、月1万円の給付になってしまいます。月1万5000円の違いですから、年間では18万円もの差が出てしまいます。
保育料も世帯住民税の所得割額によって金額が変わります。3歳児以上は所得制限なく保育無償化となっていますが、0歳~2歳児の保育料は世帯住民税の所得割額によって細かく区分されており、保育料の区分が1つ上がるだけで月額保育料が数千円上がってしまうということもあります。例えば区民税所得割額が43万5400円未満と43万5400円以上の場合で月6000円の差になります。(杉並区1・2歳児保育標準時間保育料)
高校無償化(高等学校等修学支援金制度)についても全員が無償となるわけではなく、通う学校や世帯所得によって支援金の金額が変わります。各世帯の扶養人数や控除等が加味された上での課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除の額によって判定されます。控除をしっかり申告せずに所得が上限を超えてしまうと39万6000円の支給額のはずが11万8800円になってしまったり、まったくもらえないこともあります。
税金が少し返ってくるだけならそんなに神経質にならなくてもいいやと思っていたという方もこれだけの影響があると知って驚いたのではないでしょうか。
ふるさと納税や住宅ローン控除は対象外
このように税金は、全て収入から各種控除を差し引いた所得をもとに判定されます。ただし、児童手当、保育料、高校無償化の判定基準となる所得の計算の際の控除は、所得税の計算の際の控除とは少し異なります。所得税の計算の際に控除されるものの中には、児童手当、保育料、高校無償化の際には控除とならないものもあります。例えばふるさと納税や住宅ローン控除は税金の計算の際の控除の対象ではありますが、保育料、児童手当、高校無償化の判定における控除には該当しません。逆に確定申告をすることでしか控除されない雑損控除、医療費控除、青色申告特別控除は控除対象となります。