モラハラをする人を結婚相手に選ばないためにはどうすればいいか。モラハラ離婚に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「モラハラ夫は妻に暴言を吐く一方で、自分の考えを相手にうまく伝えられない『内弁慶』なことが多い。そして、友人がいない、家族との関係が悪いなど、結婚準備の段階で兆候が見られる」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。また、罵倒や叱責といったモラハラの言動について具体的に書いていますのでご注意ください。
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写真=iStock.com/Tonktiti
※写真はイメージです

「知的で誠実そうだったのに」結婚したら一変

会社員のA子さん(29歳)は、マッチングアプリで知り合った男性と半年の交際を経て結婚しました。

夫は2歳年上で、理系メーカーに勤める会社員。知的で誠実そうな外見で、A子さんの両親も「大人しい性格のA子がこんなしっかりした人と結婚してくれれば安心だ」と喜んでいました。

結婚後、A子さんは退職して専業主婦になりました。幸せな結婚生活が始まるかと思いきや、誠実そうだった夫は、毎日のようにA子さんを怒鳴りつけるようになりました。

どんなにささいなことでも、夫は一度スイッチが入ると何時間も怒鳴り続けます。決まってA子さんを「物を知らない、頭が悪い」となじり、どんなに謝っても「謝れば済むと思ってるのか」とまた怒ります。

時にはA子さんの両親に電話をかけて、「お宅では娘にどんな教育をしてきたんですか!」と深夜まで怒鳴り続けることもあります。

「夫はとても弁が立つ」と心配する妻

A子さんは「夫は本当は優しい人なのに、私が非常識だから怒らせてしまうんだ」と、気を付けて夫に接するようにしましたが、それでも何で怒り出すかわかりません。

際限なく怒鳴られる毎日が続き、気が付くと、夫がいない時でも怒鳴り声が頭の中に響き、夫の帰宅時間が近づくと動悸どうきがするようになりました。

このままでは心身を壊してしまうと思い、A子さんは実家に帰りました。そして離婚を決意して、私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。

まずは協議離婚を目指し、それが無理なら調停や裁判になるという一般的な見通しを話すと、A子さんは「夫はとても弁が立つ人なので、先生も言い負かされてしまうかもしれません。調停委員や裁判官も夫に説得されてしまうかも……」と心配していました。

A子さんが録音していた暴言を聞くと、どれも音が割れるほどの金切り声で怒鳴っている音声ばかりでした。夫は泣きながら謝るA子さんに長々と叫んでいるものの、内容はなく同じ話を繰り返すばかりで、最後は夫が飽きて「もういい!」と言い捨てて終わっています。