うまくいかないときに自分を責める必要はない

人間関係で数々の失敗をしてきたからこそ思うのは、一度うまくいかなかったからといってあきらめてはいけないということです。

たとえば、よかれと思って発した言葉が、逆に相手を追い詰めてしまった。誠意を尽くしたつもりなのに誤解を招いてしまったといったことは、どうしても起こります。

そんなときに、自分を責めたり相手や状況を非難したり、もうダメだと決めつけたりしていても解決には向かいません。

失敗は、誰にでも起こります。また、たまたま相手の虫の居所が悪かったり、話をするタイミングが悪かったりしただけということもあります。時間を置いてタイミングを見計らい、「実は、あのときね」と話を切り出すと、意外に誤解が解けることもあるのです。

握手をする2人
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

重なりあうところは必ずある

お互いが自分の意見や主張だけをとおそうとすると、必ず衝突してしまいます。

しかし意見が食い違っていても、それぞれの主張の共通点は多少なりともあるものです。それをみつければ、意外な「落とし所」がみえてきます。方法論が違うだけで、同じ目的に向かって進んでいるのですから。

自分と他者の意見が重なるところに、「第三の道」をみつけましょう。

神垣しおり『逃げられる人になりなさい』(飛鳥新社)
神垣しおり『逃げられる人になりなさい』(飛鳥新社)

たとえば、あなたは、休日は部屋の中で静かに過ごしたいのに、パートナーはアウトドア派だったとします。いつも週末の過ごし方で揉めるのですが、「2人で楽しく過ごしたい」という思いは一緒です。そうであれば、森のコテージを借りてあなたは屋内で読書などをして、パートナーは近くの自然を満喫し、夜はともに過ごすという選択もあるのです。

それをみつけるためには、「この人の考え方は、いつも○○だ」と決めつけず、「その人には、その人なりの事情がある」と考えてみるといった姿勢が役立ちます。

とはいえ私自身、家庭でもこれがなかなかうまくいかず模索の日々は続きます。公私ともにコミュニケーションはむずかしいものですが、だからこそ、うまく伝わったときのうれしさはまた格別です。それが、人間関係の醍醐味だいごみなのかもしれません。

神垣 しおり(かみがき・しおり)
ノートルダム清心中・高等学校校長

広島県出身。ノートルダム清心中・高等学校卒業後、広島大学教育学部在学中に、香港大学人文学部留学を経験し、国際協力・支援も志す。広島市立中学校教員(臨時採用)を経て、1983年よりノートルダム清心中・高等学校社会科教員として勤務。仏教大学通信制により、宗教科の免許取得後、2004年より宗教科も担当。2018年よりノートルダム清心中・高等学校の校長を務める。