「デジタル化の肝は『信頼』」

日本では、マイナンバーの公金受取口座に誤って別の人の口座が登録されるミスが相次ぎ、個人情報が漏洩した問題で9月20日、個人情報保護委員会がデジタル庁に対し、行政指導を行った。登録ミスについてデジタル庁に報告があったにもかかわらず、その情報が担当者と管理職で留め置かれて庁内で共有されず、公表が1年近く後になるなど、対応が遅れたことが指導対象となった。

相次ぐ口座の誤登録や、その対応の遅れは、既に低かった政府のデジタル化に対する信頼度を、さらに落とすことになった。

フィンランドのルースカネン氏は「政府の、情報管理に対する信頼はデジタル化政策の一番の肝」だという。「ただし、いきなり信頼しろといっても無理です。フィンランドでは、情報管理の透明性を高める取り組みについては、歴史的な積み重ねがあります」

こうした取り組みの一つが、アクティビティヒストリーだ。国民は、オンライン上で自分が行ったり閲覧したりした行政手続きの履歴を、すべて見ることができる。また、システム側では、誰がどのデータにアクセスできるかが明確に定義されており、それ以外の人は見ることができない。

システムによって若干の違いはあるが、医療関係のデータベースなどは、オンライン上の自分の個人情報について、自分が認めていないアクセスがあった場合に確認できるので、「知らないところで、勝手に個人情報を見られたり、操作されたりしていないか」を監視できるという。また、自分のパーソナルデータを確認し、間違えがあれば直してもらうよう申請できる。もし日本でも、このように自分で確認できる仕組みがあれば、自分のマイナカードやマイナ保険証に誤った情報が登録された場合、すぐに発見できたのではないだろうか。

デジタルリテラシーはEUで1位

そして、忘れてはならないのが、国民のデジタルに関する知識だ。フィンランドのデジタル化がここまで進んだ背景には、フィンランド人のデジタルリテラシーがEUの平均を大きく上回っていることもあるのではないだろうか。

前述のDECIのリポートによると、フィンランド国民のデジタルリテラシー(デジタル関連の人的資本)はEU27カ国中1位である。

例えば、国民の79%が少なくとも基本的なデジタルスキルを持ち、「EUデジタルの10年」の目標である80%に近づいている。そして、48%の人が、基礎以上のデジタルスキルを持っているという。