体が大きく変わる思春期の子に必要な栄養素とは?

「おなかいっぱい」食べれば必ずしも必要な栄養素がすべて充足するわけではありません。量は足りていても、必要な栄養素が満たされていない状態が少なくないのです。これを、「質的栄養失調」と呼んでいます。質的栄養失調は、体の機能を損なうために、様々な体調不良を引き起こしてしまいます。

二次性徴期はこの質的栄養失調を特に引き起こしやすい時期であるため、起立性調節障害との関連が強いと私は考えています。

二次性徴期は、その急激な成長を支えるために、必要となる栄養が一生の中で最大となります。国が作成した食事摂取基準から、主だった栄養素の推奨量を年代別に図表1にまとめてみました。

【図表1】二次性徴期における主な栄養素の推奨量(男女、年代別)
出典=『朝、起きられない病』(光文社新書)

男児は15〜17歳が「必要な栄養素の推奨量」がピークに

主だった栄養素を年代別に見てみると、男児では15〜17歳、女児では12〜14歳あたりに、必要な栄養素の推奨量がピークを迎えます。この時期は、二次性徴に伴う臓器の発達・変化による必要量の増加と、体が大きくなることによる必要量の増分のために、一生の中で一番多くの栄養を必要とするようになり、その量は成人をしのぎます。さらに、部活動などでスポーツを活発に行なう時期でもあることから、必要な栄養はさらに増えることもあります。

図表1は身体活動レベルが「高い」場合。身体活動レベルが「ふつう」の場合、1日に必要なカロリー数は一般的な成人男性で2650キロカロリー(kcal)、成人女性で2000キロカロリーですが、男子は15〜17歳で2800キロカロリー、女子は12〜14歳で2400キロカロリーです(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版より)。

しかも、筋肉が増えたり骨が伸びたりする時期なので、筋肉や骨の材料であるタンパク質やミネラルも成人より多く必要となります。すなわち、肉や魚、卵といった動物性食品を、一生の中で一番多く食べないといけない時期なのです。

そのため、十分に栄養を満たす食事をとるには相応の配慮が欠かせないのです。