※本稿は、今西康次『朝、起きられない病』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
ある日突然、朝起きられず学校に行けなくなってしまう
起立性調節障害の患者は、それまでごく普通に生活し、学校生活を楽しく送っていたのに、あるときから突然、朝起きられない、頭が痛い、おなかが痛い、頑張りたくても頑張れないといった状態になってしまい、何が何だか分からない状態で苦しんでいます。「なぜ自分はこんな状態になったのか」、そう強く思っていることでしょう。
起立性調節障害の原因を指し示すヒントは、患者の栄養状態を調べることで見えてきます。
実際に、症状がある児童生徒を診療すると、総じて栄養上のトラブルを抱えています。
調子が悪いから食欲がないのか、食の問題があったから栄養上のトラブルを招いたのか……「卵が先か鶏が先か」の議論と似ていますが、起立性調節障害の好発年齢が小学校高学年〜中高生であることを考えると、様々な食生活の変化や体の成長期であるという背景が見えてきます。必要な栄養をとることができなくて、徐々に栄養トラブルに陥っていく……と考えるのが自然でしょう。
二次性徴期に「質的栄養失調」になってしまうリスク
起立性調節障害を発症するピークの時期である二次性徴期は、心と体が大きく変化し、特に生殖能力を持つようになるというのが一番の特徴です。外性器の変化のみならず、様々なホルモンの変化があります。
男子の二次性徴の特徴は、精巣からテストステロンなどの男性ホルモンが分泌されるようになることです。それによって精巣が成長したり、陰毛が生えてきます。女子の二次性徴の特徴は、卵巣からエストロゲンなどの女性ホルモンが分泌されるようになり、乳房が膨らんだり、陰毛や腋毛が生えたり、体格的にも女性としての特徴を持つようになることです。
精神的にも大きく変化して自我を確立していく大切な時期でもあり、同時に反抗期もやってきます。
このように、心身共に変化の激しい二次性徴期は、いくつかの要因から栄養失調になりやすい時期でもあります。そして、その栄養失調は、量に問題があるというよりも、食べている栄養の質に問題があることがほとんどです。