大半の女性が最下層の等級に位置づけられることになる
いずれも従来の「コース別雇用管理」を廃止すると言っている。しかし、これまで一般職などが黒子として支えていた銀行の事務作業がなくなるわけではない。
確かに定型作業をコンピュータに処理させて自動化する“事務ロボット”のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の浸透によって、金融・保険業界では事務作業の軽減が図られる一方で、店舗の統廃合も進んでいる。しかしそれでも一般職が担っていた仕事が消えてなくなるわけではない。総合職と一般職の賃金体系を職務・役割で一本化する場合、従来の総合職が担っていた職務・役割別の賃金等級の下に事務作業を担う人たちの等級が入るという立て付けになる可能性が高い。そうなると大半の女性が最下層の等級に位置づけられることになる。
その場合、もちろん給与の高い上位の等級を目指すチャンスが与えられるが、転勤の有無も条件に入る可能性があるだろう。賃金制度を変えただけで女性の賃金が上がるわけではない。キャリアアップしたいという女性がどれだけ増えるかかが問われる。人事制度を変更しても蓋を開けてみたら、結局、下の賃金等級に女性の多くが滞留していたという事態にもなりかねない。
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。