男女の賃金格差が最も大きい業種
今年のノーベル経済学賞は、男女の賃金格差の研究で著名なハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授に決まった。格差の背景には根深い賃金差別があることを指摘しているが、それは日本でも同じだ。
今年6月末以降から本格化した人的資本情報の開示によって、今まで見えなかったものが見えてきた。その1つが男性の育休取得率や女性の管理職比率は相対的に高いのに、なぜか男女の賃金格差が大きい業種が存在することだ。
前回、金融・保険業はとくにその傾向が顕著であることを書いた。人的資本状況の開示は厚生労働省の「女性活躍推進企業データベース」や有価証券報告書に記載されている。男性の育休取得に熱心な企業ほど女性の活躍推進に注力し、女性の管理職比率も高くなる。女性の管理職比率が高まれば、賃金水準の高い役職者が増えることを意味し、男女の賃金格差も縮小することが予想される。
日本生産性本部が2023年3月末決算の東証プライム企業を調査した「有価証券報告書における人的資本開示状況(速報版)」によると、男女の賃金格差の全体平均は、男性を100とすると女性は70.8%だった。一方、「金融・保険・不動産業」の男性育休取得率は82.6%と1位、女性管理職比率も14.8%と2位であるが、男女の賃金格差では64.7%と、業種別では最も男女の賃金差が大きかった。
女性管理職は多いのに…40%前後の賃金格差の謎
また、マーサージャパンが厚生労働省の女性活躍推進の企業データベースを基に調査した男女の賃金格差の業種別順位によると、格差が最も小さい業種は「福祉」だったが、「銀行」は42位、保険は43位と最下位だった。企業規模別の賃金差は1001~5000人で銀行が男性の56.9%、保険が62.0%。5001人以上では銀行が63.8%、保険が61.4%であり、共に40%前後の賃金格差が存在する。
男性育休取得率や女性管理職比率が高いのに、なぜ銀行・保険業は男女の賃金差が大きいのか。