仕事に夢中になり、キャリアを積み重ねるうちに結婚の機会を逃してきた女性が陥りやすいのが「婚活沼」だ。アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラーの伊藤友美さんは「婚活沼にハマってしまう理由は人によってさまざまですが、全員に共通しているのは『自己否定が根底にあること』です。実は、女性が周囲の男性をどう見るかは、自分の父親をどう見ているかに密接に関係しています。これが無意識の自己否定を生んでいるのです」という――。
食事中にゲームをする男性を見つめる女性
写真=iStock.com/SrdjanPav
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「婚活沼」にハマる女性には共通点がある

婚活沼とは、結婚すると決断しないままずるずると婚活し続け、異性との間に起こる現実に一喜一憂する状況を指す。婚活沼にハマっている40代・50代の婚活女性は多い。婚活沼にハマってしまう理由は人によってさまざまだが、全員に共通しているのが「自己否定が根底にあること」である(自覚しているか無自覚かは人による)。

今回は「父親を見下している」ことで、無自覚に自己も否定してしまっていた女性の事例を紹介する。このパターンに陥っている例が、アラフォー・アラフィフ婚活市場には少なくない。

※プライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

「なぜ婚活市場にはまともな人がいないんですか?」

外資系企業に勤務するK香さん(50歳)は、初対面からコミュニケーション能力の高さがうかがえる女性だった。会社でのポジションは、人事部長。管理職になってからもコーチングなどを学び自己研鑽を続けている、向上心が高く勤勉な女性だった。

45歳のときに購入したマンションでひとり暮らしをしており、休みの日にはイタリア料理やワイン、テーブルコーディネートなどを趣味で習っているとのことだった。

活動的なK香さんは、これまで決して出会いに恵まれなかったわけではない。最近までつきあっている人もいたが、50歳を目前に「このままずるずると付き合っていても、彼とは結婚にはつながらない」と関係を清算し、マッチングアプリと結婚相談所で婚活を開始したというわけだ。

メイクやファッションへの意識も高いK香さん。相談所に登録して早々、順調にお相手を紹介され、デートも申し込まれていた。1年間で会った男性は約20人。しかし、一向に「この人だ」というお相手には出会うことができずにいるのだと相談を受けたのが、私とK香さんの出会いだった。

20人の中には、デートが続いた相手もいたという。誘われるままに何度か食事に行っていた。しかし、K香さんは結局その人をお断りしてしまう。その理由は、K香さんいわく「成婚料を払うことをためらってしまった」から。

多くの結婚相談所には、成婚退会するときに「成婚料」を支払うシステムがある。金額はそれぞれ異なるが、10万~20万円のところが多い。K香さんは「もしこの人と結婚することになったら、何十万も払わないといけないの……?」と考えてしまったのだという。

もちろん、K香さんはお金を持っていないわけではないし、ケチな性格でもない。その人と心から「結婚したい」と思えるのであれば、10万でも20万でも喜んで払うつもりはある。K香さんは、そのお相手に「そこまでの価値がない」と思っている自分の本心に気づいてしまったのだ。

K香さんは言う。

「なんで婚活市場には、まともな人がいないんですか……? 結婚したいと思える人がいません」

これは、婚活で「出会い」に困らない人からよく聞く声である。婚活を始めても、そもそもお相手に出会うことができない人も中にはいる。そういう人から見れば、出会いに困っていないK香さんのケースは、「ぜいたくな悩み」に感じられるかもしれない。

しかし、当事者としては切実だ。出会いには恵まれているだけに、K香さんは「この先何人に会ったとしても、私が結婚したい相手に巡り会うことはできないのではないか」と希望を失い、婚活に疲れてしまっていた。