20歳のとき甲状腺がんが発覚した女性の体験談

「そのことを看護師の母親に話したら、他県にある甲状腺で有名な病院にセカンドオピニオンを受けに行こうと連れて行ってくれたのです。

私はもともと健康で、ずっと部活で陸上もしていました。体力には自信があったし、そのとき、ちょっとだるいのは風邪のせいかなと思っていたぐらい。セカンドオピニオンは大げさかなとも思いましたが、一応そこで検査を受けることにしました」

検査から3日後、大学で講義を受けているときに「検査の結果、悪性でした」という電話連絡があった。そのときは怖くてパニックになり、大学には戻れなかった。腫瘍は4センチにもなっていたが、三島さんはまったく気が付かなかったという。

三島さん
筆者撮影
三島さん

5月に甲状腺がんと診断され、7月に入院し、手術して切除した。

「今では甲状腺がんの多くは手術しなくても良いようですが、母も手術をすすめ、私もがんのような怖いものを自分の体の中に置いておくのは嫌だと思い、手術に踏み切りました。

切除して1週間後、無事退院したのですが、その1週間後に傷口が膿んで再入院。あのまま放っておいたら、死んでいたかもしれないよと言われました。

手術後は体調が悪かったですね。マラソンもサブ3(フルマラソンを3時間以内に完走)くらいの実力だったのに、手術でこんなにも体力が落ちるものかと思いました」

手術後、がんの経験を話せる相手がいないことが辛かった

大学のある都市に戻り、夜中は体力づくりに励み、8月にはマレーシア留学にも行った。母は「傷跡だけは残さないで」と医師に懇願したが、術後すぐとあって首の傷は赤いみみずばれのようになって残っていた。2日に1度テープを貼り換えて、熱いマレーシアの夏を過ごした。外国人の友人は「どうしたの?」と聞いてきたので事情を説明したが、特別驚くようなことはなかった。

「がん自体を取り除いたからといって、もう終わりじゃないんですね。手術のときにリンパ節もとっているので、体調がおかしいと自律神経が乱れました。それは今でもちょくちょくあって、これが甲状腺の影響なのだなと感じています」

身体は順調に回復していったが、いちばん辛かったのは精神的な問題だった。「相談できる人がいなかったこと」だと三島さんは言う。住んでいる地方都市は、ただでさえ若者のいない過疎地でもあり、患者会があるのかも分からず、がんにかかったと情報発信している人はいなかった。SNSやネットに敏感でなかった三島さんは、知りたい情報にたどり着けなかった。

今は元気に働く三島さん。自律神経が乱れることもある。