子どもの登校しぶりや不登校は親も追い詰められてしまうケースがあります。児童精神科医の齊藤万比古さんは「保護者が役割分担をすることが大事。また祖父母に預かってもらう、専門家に相談するなど外の助けも積極的に利用してほしい」といいます――。

子どもが不登校になったとき、親にできること

子どもが登校しぶりや不登校の兆候を見せたときに、まず絶対的にするべきなのは、両親が支え合うことです。子どもが「学校に行きたくない」と打ち明けられたほうの親が、「あの子は、こういうことに悩んでいる」という事実を、もう片方の親に伝えて、互いに子どものことを話し合うことが大切です。

もちろん学校で犯罪に近いようないじめが起きていたり、教師による体罰が度を過ぎていたりしたら、違う意味で親が手をとり合って立ち上がらなければいけませんが、起きているたいていのことは、そこまでのレベルではありません。夫婦で話し合い、ここは様子を見ようか、相談に行こうか、そういうアイデアが出てくることは、とても健全なことだと思います。

向かい合って話し合う2人
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権威的な父親を恐れていた高校生男子

ある不登校の高校生男子の事例です。父親が権威で引っ張っていく家庭で、その男の子は気が弱くて親にも逆らえないし、友だちにも逆らえない。本当に受け身のお子さんでした。

しかし夫婦で話し合うという取り組みを行っていただくなかで、このお父さんは自分が前に出ていくと、息子は意識して何もしゃべれなくなると気づきました。だから自分は息子のことは一切口出ししない。その代わり、サッカーや野球のチケットが手に入ったら行こうって声をかけるからと。

そして実際にチケットが手に入ったときに息子を誘うと、最初は拒否されていましたが、何回も機会があるごとに誘っていたら、あるときふと一緒に来るようになりました。そうするとその子は母親からも、ちょっと距離をおけるようになって、お母さんも少し楽になってきたんです。

結局、その子は高校を中退し、高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)を受けて、浪人して大学に行きました。彼は、そのプロセス全体を通して本当に自立しました。親のちょっとした気づきによって、子どもは徐々にですが、よい方向に向かっていくのです。