「リスキリングは儲かる」という分かりやすい先行事例
今のところリスキリング途上国にも見える日本だが、先行事例がないわけではない。
日立製作所といえば、家電製品や鉄道、発電所などをイメージされる方も多いかもしれないが、近年、ITビジネスに力を入れており、その企業像を急速に変えている。
変革のきっかけは2008年度。当時、国内の製造業として過去最大となる7873億円の赤字を計上したことだった。
ここから構造改革に着手し、抜本的な人事制度改革、また事業の選択と集中を繰り返しながら、今はデジタル技術を生かし、国内外の社会課題を解決するソリューション事業に力を入れているのだ。
社員の習熟度に合わせて130のコースを用意した
同社は、2019年にこれまで分野ごとに分かれていた研修所を統合し、新しい研修機関「日立アカデミー」を設立。特に注力するのが、デジタル人材の育成だ。
日立製作所では、顧客の課題を捉えて解決策を描くデザインシンキング、膨大なデータを分析し価値を生み出すデータサイエンスなど、デジタル事業に必要な12種類のスキル(2022年時点)を定めたうえで、担当する事業に求められるいずれかのスキルを持っていれば“デジタル人財”に認定している。
この人材育成のために「リテラシー向上」「ベーシック」「アドバンス」「プロフェッショナル」という4段階の教育プログラムを設け、約130コースを提供している。
2020年度には国内のグループ企業の全社員を対象に、デジタルリテラシー向上のためのDXの基礎研修を実施し、のべ16万人が受講。さらに2021年度までに3000人のデータサイエンティストを養成するなど成果を上げ、2022年度末時点で、“デジタル人財”は8万3000人(国内4万2000人、海外4万1000人)となった。