プカリと浮き上がることで見えた世界
起業を考えた裏には、ブランドマネジャー時代に感じた開発から販売に至る中での無力感もあるという。
「例えば、開発した商品を世に送り出す場合、いかに世間に知ってもらうかが勝負です。でもニッチな商品であればあるほど、既存のやり方ではなく、別の方法を考えなければいけないのに、会社の既存ルートから外れることはできない。コンビニが扱ってくれないと『失敗』の烙印を押されてしまう。自分たちが開発したブランドや商品を新たな方法で育成するには、サラリーマンでは限界があると感じたんです。もちろん社内での刺激はたくさんありますが、外部の人たちからの刺激はさらに刺激的で『すごい!』って感じました。モヤモヤしている暇はない、やろう! と決心しました」
大きい組織の中では埋もれることの多いアイデアなど、会社のCEOという立場なら、リスクさえ覚悟すれば、自身で決定し、遂行できるのが起業の強みだと脇さん。
「大企業という海の中で、海面にプカプカ浮いてみると世界は広いことがわかるんです。じっと海中に潜っている人から見れば『あいつは何をしているんだ』となることも。浮いていると足を引っ張られて海中に引き戻されそうになることも多いけれど、外を見渡してみて、私は自分の人生に後悔なくやるべきだと思ったのです」
CANからWILLへ。一歩踏み出すことで世界は開ける
組織にいながらにして自由に働くキャリアスタイルは、脇さんの生き方そのものだとも言う。
こうした生き方は、さまざまな人との出会いがもたらした。
「私の人生は、まさに『コネクティングロッド』。仕事で出会った外部の人たちから刺激を受けて、『できること』をまずやってみました。そこからまた新たなつながりが生まれて。自分の今の能力でできること、なおかつ、何かちょっと楽しいと思うことって何かと、立ち止まって考えることを大切にしてきました」
「CAN」を考え、すぐに小さな行動を起こす。それが自分自身の「WILL」につながったという。
「今、新たなアイデアをカタチにしたい、副業にしたいと考えているなら、一歩踏み出すことで、必ず開ける世界があります。『やってみなはれ』という、勤務する会社の創業者の言葉があるのですが、その言葉どおり、一歩踏み出し、やってみることで、見えてくることはたくさんあると思っています」
ブランドマネジャー時代に出会った人、そして、ダブルキャリアを考え始めてから退社後や休日を利用してさまざまな場所へ出向き、そこで出会った人とのつながりが起業へとつながったという。こうした脇さんの副業スタイルはまるで「夢物語」のように感じた参加者も。起業にはたくさんのリスクが伴うが、そこまでの勇気がないとの声も上がった。「退社せずにダブルキャリアとなるタネの見つけ方・育て方があれば」との質問には、
「『一歩踏み出す』をもう少し掘り下げると、Facebookや副業セミナーなどで、自分の好きなこと、気になることでフィルターをかけて、積極的にSNS上で交流したり、リアルで参加したりしてみてはどうでしょうか。人のつながりって芋づる式にどんどんつながり、大きな力になるんですね。だからこそ、行動を起こすことがタネを見つける最大のポイント」とのアドバイスに、参加者一同大きくうなずいた。