「ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべき」と提言

「ジュリー氏が経営トップのままでは、役職員の意識を根底から変え、再出発を図ることは、極めて困難であると考えられる。したがって、ジャニー氏の性加害の事実を巡る対応についての取締役としての任務の懈怠があることも踏まえ、ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があると言わざるを得ず、ジュリー氏は代表取締役社長を辞任すべきと考える。これにより、ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ることとなる」

特別チームがジャニーズ事務所に雇われた立場であるにも関わらず、社長交代を提言したことには、正直驚いた。一方で、この報告書を事務所が公表したということは、ジュリー現社長の退任は既定路線になっているとも推測できる。果たして、それは正しい責任の取り方なのか。

中川さんはこう指摘する。

「社長が辞任したとしても、ジャニーズ事務所の株を100%保有している状態が変わらなければ、新しい代表取締役を指名できることになる。影響力を保ったままの形だけの退任には意味がありません。しかし、株式を手放して会社を去り『私はもう関係ありません』というスタンスを取るなら、それも責任放棄に等しいですよね」

ジャニーズ事務所の解体は不可避か

そもそもジャニーズ事務所は「再出発」すべきなのか。

「ビッグモーターの問題もそうですが、ガバナンス不全に陥った組織が問題の根本解決や過去の清算を行わずに事業活動を続けている限り、責任を果たしたとは言いがたい。現社長がすべきなのは、辞任せずにきちんと会社の幕引きをすることだと思います。もちろん所属タレントやファンクラブ会員への対応も含めてということですが……。それはそこまで難しいことではなく、例えばアイドルは他の事務所に移籍してもいいし、グループごと独立して自分たちで会社を作ったっていいはずなんです」(中川さん)

今回の衝撃的で決定的な報告書を前に、ジャニーズ事務所の所属タレントや社員はもちろん、ステークホルダーであるテレビ局や出版社の人間、さらには“推し”に課金することで経営陣に利することになってしまっているファンの人たちも、今こそ、喜多川一族の呪縛から解き放たれるタイミングなのではないだろうか。

村瀬 まりも(むらせ・まりも)
ライター

1995年、出版社に入社し、アイドル誌の編集部などで働く。フリーランスになってからも別名で芸能人のインタビューを多数手がけ、アイドル・俳優の写真集なども担当している。「リアルサウンド映画部」などに寄稿。