賃金格差の要因は転勤区分の有無

にもかかわらず男女の賃金格差が大きいのはなぜなのか。一般的に賃金決定の要因としては、性別以外に年齢や勤続年数、学歴、職種、役職も加味される。一般的統計でも高卒と大卒では賃金差があることが知られており、年功的賃金制度が多い日本企業では勤続年数が重視される傾向がある。あるいは役職に就いている女性が男性より少なければ全体の格差の要因にもなる。こうした点を考慮し、厚生労働省は数値の公表だけではなく「男女の賃金の差異の説明」も推奨している。

積まれたコインの上に座る男女の人形
写真=iStock.com/hyejin kang
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みずほフィナンシャルグループは「役職ごとに比較すると、上位の役職における差異は90%台です。なお、差異の要因は転勤区分の有無によるものです」と説明し、賃金差異の主要因についてこう述べている。

「男性のほうが、①上位役職者が多いこと②給与水準が高い全国転勤有の区分の社員が多いこと③勤務時間が長いこと等によるものです」(有価証券報告書)

三井住友フィナンシャルグループは「同一職責における男女の差異はありませんが、職責・賃金が高い管理職への女性登用が男性に比べ進んでいないこと等から差異が生じております。賃金の差異の縮小に向け、管理職への女性登用の促進・育成等に取り組んでおります」(有価証券報告書)と述べている。

上位役職者に男性が多く、女性登用が進んでいないといっても両社の女性管理職比率は他の業種に比べて相対的に高い。にもかかわらず他の業種よりも男女の賃金格差が大きいのは、みずほが指摘しているように全国転勤の有無など、雇用区分によって給与水準が違うからである。金融・保険業には同じ正社員でも総合職・一般職だけではなく、地域限定社員、営業職など給与体系が異なる雇用区分が多い。例えば同じ課長でも雇用区分が違えば給与も異なる。

みずほは転勤の区分で異なる給与体系を一本化する予定

もちろん雇用区分を設けるのは業種特有の事情もあるだろうが、単純に平均の男女の賃金格差が違えば、合理的な理由があっても、投資家からは「女性に差別的な企業」と、思われてしまう可能性がある。あるいは何のための雇用区分なのかと、投資家から合理的説明を求められる可能性もある。

みずほフィナンシャルグループは今後の方針として「現在全国転勤有無の区分の違いにより異なっている給与体系を2024年度に一本化する予定です」(有価証券報告書)と述べている。

男女の賃金格差の是正に向け、あらゆる角度から見直しが求められてくるだろう。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。