事務局長が数年おきに天下りでやってくる

Cさん(地方私大/50代)

・私大ではあるが、地元自治体の誘致を受け、自治体からの資金提供によって設置された大学。そのため事務局長は数年おきに自治体から天下りでやってくる。

倉部史記・若林杏樹『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)
倉部史記・若林杏樹『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)

・自治体からの潤沢な補助金で長く運営が支えられてきたため、他の補助金などを積極的に獲得する組織風土ではなかった。しかし自治体の財政が厳しくなった途端に急な方針転換を迫られるなど、自治体の姿勢に振り回されている。

・「大学で働いている」というアイデンティティに乏しい職員も多い。「地元で事務職として、安定して働ける職」という程度の認識でいる職員が多いのではないか。地方だと事務職の正社員の求人がそもそも少ないため、そうしたニーズの受け皿になっているところがある。

・自分の仕事を増やすことを極端に嫌うタイプの職員が少なくない。「余計なことをするな」というタイプの管理職もいる。そのため改善の提案は事務組織ではなく、教員側から物事を通すほうが早い。本来なら職員の方から行うべき取り組みも教員頼みになっている。

国立、私立といっても千差万別

Dさん(首都圏公立大/50代)

・大規模な自治体が設置する公立大。公立大学法人化した後は独自に職員を採用しているが、その後も事務職の5%程度は自治体から異動してきた職員であり、管理部門の要職は彼らが占めているように思う。一方、学生の教育支援に携わる教務部門は法人採用の職員がほとんどであり、法人化直後は私立大学からの転職者も多かった。

・最近、新卒採用で入職する職員には、公務員志望の方も見られる。

・法人化した際、自治体の首長が教職員全員の任期制を打ち出したが、人間関係がギスギスして離職者が増えてしまい、全員任期制は数年で廃止された。

ここに挙げたのはあくまでもごく一部の例です。一口に国立や私立と言っても実際には千差万別でしょうし、同じ法人の中にもさまざまな方がいると思います。すべての国立大がこうだ、私立はこうだと断じる意図はありません。ですが、たった4例だけでもこれだけ事情が異なるのかと感じていただければ幸いです。

倉部 史記(くらべ・しき)
追手門学院大学客員教授、進路指導アドバイザー、高大共創コーディネーター

日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会で、進路指導に関する講師を務める。著書に『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)、『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)など。

若林 杏樹(わかばやし・あんじゅ)
マンガ家

新卒で私立大学職員として入職。超ホワイトな職場で5年間働くも、長年の夢を叶えるために脱サラし、フリーの漫画家に。全くの無名、ツテなしから、SNSを営業ツールとして駆使し、天才美少女漫画家として幅広く活躍中。著書に『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)『学校では教えてくれない 稼ぐ力の身につけ方』(小学館)など。