閉経後は女性の人生の黄金期
性的な加齢を緩やかにするのも、漢方が目指す「元気で長生き」の一環です。更年期の前後を最大限穏やかにして、静かに着地させる。それは漢方的な養生を実践することで可能になることを、女性たちに広く知ってもらいたいのです。
私は女性が様々な経験を積み、精神的に最も充実するのは、60代、70代であると考えています。
それまでは、ホルモンの波に翻弄されながら、育児や仕事などに時間や気力や体力のほとんどを使ってきたことでしょう。しかしその後は、閉経を穏やかに迎えることで、ホルモンの波に振り回されるときは終わります。実生活でも、仕事や育児に一段落つき、ようやく様々なしがらみから解放された人生の黄金期がやってくる。そう思います。
そのときに、生理の荒波にもまれるままに過ごしていたツケで、心身がボロボロだったら、せっかくの黄金期が台無しになってしまいます。閉経後も肌、骨、筋肉ともにしっかりと保ち、気持ちも充実している最高の状態で、黄金期を満喫してほしいのです。
そうお伝えすると「おばあちゃんになってから黄金期なんて……」と自嘲気味に否定する女性がいますが、そんなことはありません。私のところに通ってくれている女性たちは、閉経を迎えると生まれ変わったように元気になり、趣味に、旅行にと、生き生きと飛び回っています。
自分のやりたいことがやれる黄金期を迎えるためにも、生理を荒波ではなく、穏やかな凪にできるように、漢方でコントロールしてほしいと思います。
1962年中国生まれ。漢方専門桑楡堂薬局代表。北京中医学院(現・北京中医薬大学)医学部中医学科卒業後、同大学漢方専門外来で婦人科、小児科の医師として勤務。同時にWHO国際伝統医学協力センター(北京)の中医学基礎講師を務める。89年に来日。92年東京学芸大学大学院生理・心理学修士取得。現在は漢方相談の傍ら、中医学の普及のために日本国内、北京の母校で講義を行なう。著書に『わかる中医学入門』(燎原書店)、『生理で診断 体質改善法』(家の光協会)、『春夏秋冬 自分で不調を治す 漢方的183のアイディア』(オレンジページムック)、共著に『問診のすすめ 中医診断力を高める』(東洋学術出版社)などがある。