反動を経て、ようやく性別役割分担の否定が大勢に
出生動向基本調査では、「男性は外で仕事をし、女性は家庭を守るべきか否か」という質問を、長年にわたり聞いています。このような古い性別役割分担意識は、欧米先進国ではとうの昔に少数派となり、お隣韓国でも20年も前から否定されています。そうした中、日本だけは賛成派がマジョリティとなり続けていました。
この性別役割分担について、否定派が半数を超えたのが2007年のこと(52.1%)。2009年には否定派が55.1%まで増えるのですが、それ以降、反動があり、2012年調査では再び5割割れとなっています。なぜこんな反動が起きたのか。企業内人事に詳しい人はよくわかるでしょう。2000年より四大女性総合職が増えだしたのですが、それは、何の準備も整わない中で、男社会にいきなり女性を放り込んだに他なりません。彼女らが出産適齢期になる頃に、そのひずみが訪れたわけです。
子どもができるまでは、何とか男社会に合わせて働けたフロンティア女性たちも、出産により、育休や短時間勤務を余儀なくされます。結果は、惨憺たるものでした。
まず、彼女らの休業・時短分の仕事が周囲の人たちにしわ寄せされます。ここで、非難が起きました。少なくない出産女性社員たちが、そのバッシングに耐えられなくなってしまいます。また、当時の短時間復職は、バリキャリ女性に対して、単純なルーティンを押し付けるというような無理筋のものも少なくありません。それでまた、心折れる女性がいました。
こうしたことで、会社の中で、「女性」に対して良からぬ雰囲気が醸成されていきます。
共働きの価値観は盤石なものとして定着
この時期、特徴的だったのは、女性自身の心の反動です。2012年の調査では、「男は外に、女性は家庭で」への支持が2009年よりも10ポイントも高くなっています。
こうした状態では、早晩、脂の乗ったバリキャリ総合職女性たちはこと切れてしまう……。このあたりから、企業の「女性活躍推進」が進みだすのは、こうした背景があったからでしょう。
そして、女性の働きやすい環境や、男性のイクメン化などの施策が次々繰り広げられ、「男性は外、女性は家庭」という意識は退潮し、否定派はたった10年で20ポイント近くも伸びました。直近の22年では、否定派が64.3%と圧倒的多数となっており、ようやく、先進国の最末端あたりにこぎつけました。国際的にはまだまだな水準ですが、それでも、2012年のような反動が起きるような脆弱さは見られません。
長年、この数字を見続けた私からすると、「よくぞここまで来た」と感慨無量です。