「袴田さんは戦後の4大死刑再審に続く5人目の被害者」

また検察が「血痕の赤みが残ることは不自然ではない」とする補充捜査で、7人の法医学者による共同鑑定書を提出していることに対しても、「みそタンクの中の環境があいまいなので、可能性論を言っているだけのこと。立証の体をなさないと思います。法医学者による色の変化と言ってもあまり意味はなく、再審請求審の時と同じ議論にすぎません」

同日、弁護団も冒頭陳述での主張を示した。

「袴田さんの事件は捜査機関によって作られた冤罪えんざい事件。5人目の被害者だ」と無罪を主張。

5人目の被害者というのは、戦後の4大死刑再審の「免田川事件」「財田川事件」「松山事件」「島田事件」の例があるからで、袴田さんはこれに加えて、5人目の被害者だという主張だ。

これらの事件はいずれも検察が有罪を主張したが、その後裁判所は無罪を言い渡している。

また2004年、滋賀県の病院で患者を殺害した容疑で逮捕され懲役12年が確定し、出所後に再審が始まった女性への裁判でも、初公判前に有罪立証を断念して無罪判決となった例がある。

「まさにそれと同じようになるのを私たちは期待しています。姑息こそくなというか、理屈に合わないような対応を検察はとってくるので、今後は何度でも申し入れ書を出そうと思っています。弁護団会議を13日に開きましたが、弁護士たちはやる気満々ですよ。検察への怒りでみんな燃えています」

「シャツに赤みが残るという主張は明らかに蒸し返しだ」

14日に弁護団は、検察に対し有罪立証の放棄を求める申し入れ書を提出。検察の方針は「明らかに蒸し返し。赤みが残るといっても犯行着衣であることの証明ではない」と批判し、静岡地裁へも有罪立証の方針を変更するように求めた。

また19日には、再審へ向けた第4回目の3者協議が静岡地裁で開催され、検察、弁護団双方とも、証拠が出そろい、8月末までに取り調べに同意するかの意見交換をすることになった。少しずつ審理が進む可能性も見えてきたという。

「僕は、この3者協議も公開の法廷でやったほうがいいと思っているのです。双方証拠も出尽くしたので、法廷で公開前整理手続きのようにやったらどうでしょうか。

ただしこれに対しては、検察は検討中、裁判所は裁判員裁判の形式を踏襲したいらしく、今のところ実現しない公算が強いです。

また9月から迅速に再審を始めるように裁判所に文書で申し入れていましたが、裁判所からはすぐに期日を決めることはできないとの回答でした」(小川弁護士)