近所の公園で遊ぶ姿、海やプールで撮った子どもの水着姿……。成長する子どもの姿を、SNSにアップすることには、どんなリスクがあるのか。新生児科医の今西洋介さんは「SNSに上げられている子どもの水着写真は、小児性愛者にとって格好の餌。中には、親がSNSに上げている子どもの写真を“コレクション”している者もおり、『夏は水着姿の子どもの写真がよく上がるのでベストシーズン』と言う者までいる」という――。
画像ハッキングをする人
写真=iStock.com/peshkov
※写真はイメージです

小児性愛者にとって夏は「ベストシーズン」

スマホの登場でSNSの存在が身近になり、SNSは今や生活のインフラとなりました。育児においてもSNSは育児情報を集めたり、同じ育児中の方々とつながったりとメリットは非常に大きく、すでに多くの育児世代の方が使っています。育児がひと段落した世代のお母さんの中には「私の育児を支えてくれたのは行政でも地域でもない。Twitterでつながった仲間たちだった!」とおっしゃる方もいました。

ただ、その利便性の陰で、SNSはリスクも当然ついてきます。その中でも「子どもの顔写真や水着姿をSNSにアップする」ことが引き起こす問題は非常に深刻です。かわいい水着姿や楽しい毎日をSNSに投稿したい気持ちは、私も1人の親として理解できますが、日本の現状を知ると警戒心を抱かざるを得ません。

まず、SNSに上げられている子どもの水着写真は、小児性愛者にとって格好の餌です。質の高い写真をSNSで無料、かつ自由に取ってこられるわけですから、こんなにいい“狩り場”はありません。小児性愛者の中には、親がSNSに上げている子どもの写真を“コレクション”している者もおり、「夏は水着姿の子どもの写真がよく上がるのでベストシーズン」だと言う者までいます。

そしてこうした写真はコレクターの間で高値で売買されています。実際に私が話をした小児性加害者は「保育園・幼稚園が公式SNSに上げている水着の写真は狙い目」と言っていました。いくら親が気を付けていても、こういう抜け穴もあるのです。

「児童ポルノ事犯」は増加している

下のグラフを見ても分かるとおり、児童ポルノ事犯の検挙件数は年々増加の一途をたどっています。2015年に児童ポルノ単純所持の罰則適用が開始された影響もありますが、これだけの件数があってしかも増加傾向というのは、子どもを持つ親としては恐ろしいことです。

【図表1】児童買春及び児童ポルノ事犯の検挙件数の推移
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」(警察庁「少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」から作成)より

それだけでなく、SNSにはお金を払えば名前や住所を特定する「SNS特定屋」という集団がいます。試しにTwitterで「特定屋」と入力して検索してみてください。手だれであれば、SNSに投稿した写真に写るタピオカドリンクから住所や行動範囲を特定することができるそうです。タピオカは表面が反射しやすく、撮影された場所が特定しやすいという原理だそうです。

一番気を付けねばならないのはSNSに上げた写真から住所や日常の行動範囲が特定され、子どもに実際に加害が及ぶことです。これは一番避けねばなりません。