タイミングを逃さない
褒めるにはタイミングも重要です。時間が経ってしまうと、本人も自分がどんな行動をとっていたのか、よく覚えていないということもあり得ます。「先週の会議の発言はすごくよかったよ」と言われても、ピンとこないでしょう。できるだけ直後に、そうでなくても間を空けずに伝えましょう。
さらに、1対1で褒めると、上司の熱量が伝わるのでおすすめです。人から聞いた事例ですが、オンライン会議でプレゼンをしたところ、会議が終わってすぐに、上司から「さっきのプレゼン、簡潔にまとまっていて、すごくわかりやすくてよかったよ」というメールが届いたそうです。自分の頑張りをすぐに認められて、うれしかったと話してくれました。
「具体的に」「プロセスを褒める」「タイミングを逃さない」となると、普段から部下の仕事ぶりをしっかり見ていないといけませんし、本人の気持ちを想像し、共感することも欠かせません。
漫然と部下の様子を見ていて、期末の評価面談が近付いてあわてて「いいところはどこだろう?」と探すようでは、良い褒め方はなかなかできません。意識をしていなければ、悪いところばかり目に入ってしまうものだからです。
上司には、「褒めポイント」を見つける力が必要です。日頃からこれら3つのポイントに気を付けながら見ていれば、誰に対しても何らかの「褒めポイント」が見つけられるはずです。
「ありがとう」から始めてみる
それでも、部下をなかなか褒めることができない、褒めるのに抵抗があるという上司の人は、「ありがとう」と感謝を示すところから始めてみてください。
「力を貸してくれてありがとう」
「指示したことをちゃんとやってくれてありがとう」
「部下も組織の一員なんだから、仕事をするのは当たり前だ」「指示したことをやるのは当たり前だから、わざわざお礼を言うべきことではない」と思いたくなるかもしれませんが、そうではありません。自分のチームに与えられた業務を、その部下がやってくれたわけですから、ぜひ感謝の気持ちは言葉にして表してください。
「ありがとう」は「褒める」のとほぼ同じ効果があります。「ありがとう」の習慣がつくと、「褒めポイント」を見つけることも簡単になります。部下も「認められた」と感じて、仕事に前向きに取り組むようになっていくはずです。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。