仕事で成果を出しているという自己評価もシニアは高い
また、幸福感のほかに、仕事関係の評価でもU字型カーブに近い傾向を示すデータがある。筆者とパーソル総合研究所の共同調査(2017年、3200人の正社員対象)では、ジョブ・パフォーマンスという指標を測定した。ジョブ・パフォーマンスとは、仕事に成果を発揮しているかどうか、という自己評価である。これを5段階の評価で測ったところ、図表2のとおり40歳から67歳の範囲では50〜51歳で底となり、その後は上昇傾向となり66〜67歳でもっとも高い得点を示した。
さらに、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査(JPSED)2022」においては、仕事への熱意(仕事に熱心に取り組む、という自己評価)を調査している。正規の職員・従業員を対象にしたところ、あてはまると回答した比率は、15〜24歳が47.9%だった。その後、比率は低下し、35〜44歳、45〜54歳が底となり、42.8%となる。その後は上昇に転じ、55〜64歳は50.2%、65歳以上は64.5%で比率はもっとも高くなる。
「役職定年」「定年再雇用」とは会社の「1国2制度型」
幸福感が40代後半で底を打つU字型カーブになることは、世界各国の大規模な調査で検証されていた。日本だけの調査であるが、仕事関連の自己評価の指標においても、50歳前後が底となり、シニアになるほど数値が高くなる傾向が示された。
それでは、日本の雇用の特徴である役職定年と定年再雇用と幸福感とはどのような関係にあるだろうか。ここで、定年前の働き方に大きな影響を与えている役職定年と定年再雇用とはそもそも何か、説明しておきたい。
役職定年と定年再雇用は、前に述べた福祉的雇用という考え方と関係が深い。福祉的雇用の場合、企業は本気でシニアが職場の中核になるとは考えていない。そのため、職場の中核とみなしている他の社員に比べて、処遇を引き下げることになる。役職定年と定年再雇用とは、このようにシニアを他の社員の人事管理と区分する仕組みである。これを今野浩一郎は、「1国2制度型」と呼んでいる。つまり、福祉的雇用とは1国2制度型として実現するのであり、その象徴が役職定年と定年再雇用なのだ。