人事評価制度、報酬制度を把握しておく

ルール② 入社後の「昇給可能性」を確認する

転職先を検討する際には、「年収アップで迎えてくれる企業」よりも、「入社後の働きにより、年収を上げられる制度・仕組みがある企業」という観点で選ぶのが望ましいといえます。

入社時の給与提示額が現在よりダウンしたとしても、評価の制度や仕組みが整っている企業であれば、短期間で大幅に給与額を上げられる可能性があります。昇給タイミングが年2~4回ある企業も存在します。

実際、大手企業などから事業が軌道に乗っていないスタートアップに転職して大幅な年収ダウンとなったものの、事業成長に貢献したことで1~2年後には前職年収と同水準に戻り、その後さらにアップしたケースは少なくありません。

入社を決意する前に、その企業の人事評価制度・報酬制度を確認しておくことが大切です。面接の場で、「どのような成果を上げれば」「いつまでに」「どの程度」の昇給が可能なのかを聞いてみてもいいでしょう。

ルール③ 給与交渉は転職エージェントに任せる

企業への給与交渉は、自身で行うよりも転職エージェントに代行してもらうことをお勧めします。

先ほどNG事例①でも挙げたように、交渉の持っていき方を誤ると、マイナス印象を与えてしまいます。仮に給与アップ交渉が受け入れられたとしても、企業側にはどこか不信感が残り、入社後にぎくしゃくしてしまう可能性があります。

転職エージェントは、応募者が計り知ることができない「企業側の本音」もつかんでいます。例えば、応募者に対して、どれくらい評価・期待しているか、企業からフィードバックを受けています。

つまり、給与額アップの交渉を持ちかけた場合、企業側が「増額してでも採用したい」と考えているのか、「その給与額で採用するほどの価値はない」と考えているのかを判断できるのです。それにより「交渉の余地がある」「交渉は通用しない」という境界線を見極めてくれます。

なお、エージェントが応募者本人に代わって給与交渉を行う場合、「本人が希望している」という事実は伏せ、婉曲的に進めてくれることも期待できます。

「この人の市場価値であれば、これくらいの給与額でオファーするのが妥当」と、マーケットと照らし合わせて説得してくれるケースもあります。

このように、給与交渉は転職エージェントに任せておくほうが、企業の心証を損ねるリスクを軽減できます。自身で給与交渉をする場合は、「○月に昇進の予定があり、昇進すれば○○万円になる見込み」「業績不振によって賞与の支給を受けていない」など、事実に基づく情報を伝えるにとどめたほうがいいでしょう。

構成=青木典子

森本 千賀子(もりもと・ちかこ)
morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェント

1970年生まれ。93年リクルート人材センター(現リクルート)入社。2017年morich設立、CxOレイヤーの採用支援を中心に、企業の課題解決に向けたソリューションを幅広く提案。NPO理事や社外取締役・顧問等も務め、パラレルキャリアを体現した多様な働き方を実践。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」出演。日経オンライン等のWeb連載のほか『本気の転職』等著書多数。2022年2月、日経新聞夕刊「人間発見」の連載にも取り上げられる。二男の母。