ジェネレーティブAIがますます進化する中、人間の仕事はどのように変化していくのか。ベンチャーキャピタリストである伊藤穰一さんは「ジェネレーティブAIが生成した『たたき台』をチェック、精査し、ベストなものを選ぶ、あるいはベストなものへと練り上げるというのが、人間の主な仕事になっていくと思います」という――。

※本稿は、伊藤穰一『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

AIの進化による人間の仕事の変化

ジェネレーティブAIがますます進化し、普及していくと、人間の仕事、働き方、ビジネスモデルはどう変わっていくのか。

概念的にまとめると、人間の仕事は総じて「DJ」的になっていくと思います。

僕自身もときどきDJをしますが、DJは基本的に、自分では音楽をつくりません。いろんな音楽の断片を寄せ集めてきて、機材でエフェクトをかけるなどして、コラージュのように1つの音楽を構成します。

ミキシングするDJ
写真=iStock.com/urbazon
※写真はイメージです

しかもDJには、音楽理論の知識は必須ではありません。

むしろDJに求められるのは理論に基づく作曲能力ではなくサンプリング、つまり「どんな断片を掛け合わせ、どのように機材を扱ったらかっこいい音楽になるか」というセンスです。

端的にいえば、「ゼロから生み出すこと」ではなく「掛け合わせ、練り上げること」が、DJのクリエイティビティの見せどころです。そこが、ジェネレーティブAIを使って仕事をするのと、よく似ているのです。

「ゼロから生み出す」から「掛け合わせ、練り上げる」へ

ジェネレーティブAIを仕事のツールとして使いこなすと、自分の手で「ゼロから生み出す」というプロセスは、ほぼなくなります。

ジェネレーティブAIに指示をしてたたき台を生成してもらい、それをブラッシュアップして成果物を練り上げる。上手なプロンプトを入力し、筋のいいたたき台を生成させることができるかどうかで、最終的な成果物のクオリティも違ってきます。

また、プロンプトを書く際にプログラミングの知識は必須ではありません。

たしかに、知っていると役立つことはありますが、知識以上よりも必要なのは、ジェネレーティブAIが自分の意図通りに働いてくれるよう、言語化して上手に並べるセンスです。

プロンプトは自然言語の羅列です。つまり、ジェネレーティブAIを使って仕事をする際には、「どんな言葉を掛け合わせ、どうジェネレーティブAIを扱ったら、筋のいいたたき台が生成されるか」を考えるセンスが求められる。その点においても、DJと同様、「掛け合わせ、練り上げること」が人間のクリエイティビティの見せどころといえるのです。