「すみ分け」「共存」は可能なのか

さらに、子連れとそうでない客が同じ店舗で共存するには、広い面積が必要である。スウェーデンなどの北欧の国では、レストランでも徹底的に子連れエリアと、そうでないエリアに分離されている。子連れではない人たちのエリアは、窓沿いやオープンエアのすてきなところ。子連れは、場所としてはやや落ちるが、騒いでもかまわないし、お互いさま。そうすることで、どのようなライフステージの人にもメリットがあり、誰もが気兼ねなくレストランで過ごせるようになっている。

日本の場合は、「ほかの人が行っているのとまったく同じ場所に同じ条件で家族連れで行けることがファミリーフレンドリー」と理解されていることが多いように感じる。一方、これらの国々はそうではなく、さまざまなライフスタイルの人に対し、それぞれが居心地がいいと感じられる場所を与えることで、ファミリーフレンドリーを実現しているかのようである。必ずしも全員が、まったく同じ場所で、同じ条件でなくてもいいというわけだ。

そういう視点から見ると、駅近であるがゆえに、小さな店舗が多いスープストックは、「すみ分け」や「共存」には向きにくいのではないか。無理に同じ店舗内ですみ分けや共存させようとすると、ひとり客の反感を、さらに買ってしまいそうである。

広めの店舗の場合は、家族向けの居心地のいい空間を新たに作るといった工夫をすることも、可能だったかもしれない。そうしたことをせずに、いきなり、これまでの顧客にそっぽを向いたように思われるような施策を取ることは、得策ではなかっただろう。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人