大人から子どもへの性暴力を見過ごしてはいけない

「性的グルーミング」や「子どもの性暴力」を巡る問題は複雑で、この文章では説明の不足していることもたくさんありますが、長くなってまいりましたので、このあたりで終わりにしたいと思います。

性暴力は、人の意思や感情をないがしろにする暴力です。だからこそ、被害を受けた人たちの意思や感情が尊重されること、その人たちが守られることは最優先です。

そして、本当の意味で、意思や感情が尊重されるためには、大人から子どもへの、地位や信頼を利用した性暴力が、見過ごされる、許容される社会であってはならないと思っています。子どもが理不尽に傷つけられない社会、子どもが守られる社会、暴力を受けたとしても適切に支援が提供される社会を目指すために、社会における子どもへの性暴力の認識が深まることを心から願っていますし、そのために尽力したいと考えています。

性暴力被害に関する相談機関
Curetime(性暴力の相談窓口。チャットやメールでの相談が可能)
・#8891(最寄りの、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながる全国共通番号)
・#8103(各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号
齋藤 梓(さいとう・あずさ)
上智大学 総合人間科学部心理学科 准教授、臨床心理士、公認心理師

上智大学大学院博士後期課程単位取得退学、博士(心理学)。大学で心理学の教育と研究に携わるかたわら、臨床心理士、公認心理師として、民間の犯罪被害者支援団体で、殺人や性暴力被害等の犯罪被害者、遺族の精神的ケア、およびトラウマ焦点化認知行動療法に取り組む。共著に『性暴力被害の心理支援』『性暴力被害の実際』。