睡眠時間が短い子ほど記憶を保存する海馬が小さい

睡眠不足が常習化してしまうと、恐ろしいことが起こります。東北大学加齢医学研究所では、平均年齢約11歳の子どもたち290人の脳の画像を観察し、睡眠時間と脳の発達について調べました。解析の結果、睡眠時間が短い子どもたちほど、記憶を保存する海馬の容積が小さいことがわかりました。

海馬は、コンピュータで例えると脳の中にある記録メモリー、ストレージのような役割を担っています。つまり、睡眠不足は記憶を定着させる機会を奪うだけでなく、その記憶を保存しておく記録容量さえも小さくしてしまう恐れがあるのです。

そこで私たちは、勉強時間と睡眠時間の情報を加えた解析を行ないました。

【図表2】はスマホ等を「全く使わない」と回答した子どもたちの成績を表しています。縦軸が「テストの成績」、横軸が「勉強時間」、そして奥行きが「睡眠時間」の3次元グラフで示しています。勉強時間は一番左が「全くしない」、そこから右に移るにつれて長くなります。睡眠時間は、一番手前が「5時間未満」、そこから奥にいくにつれて長くなっています。

棒グラフの色分けは、偏差値が50以上、すなわち平均以上の成績を修めている子どもたちを灰色、逆に偏差値50未満、平均未満の成績となっている子どもたちを白色にしています。ざっと全体を見回してみると、グラフの右奥側、つまり勉強をたくさんしていてかつ、たくさん寝ている子どもたちほど、学力が高いことが読み取れます。

長時間勉強しても睡眠で定着しなければ学力はつかない

ちなみに一番手前にある睡眠時間が「5時間未満」の行を見てみてください。すべて白色の棒、平均未満の成績となっています。興味深いことに睡眠時間が「5時間未満」だと、たとえ勉強を「3時間以上」頑張っていたとしても、成績上位に入ることができていないのです。これはまさに、前述のレム睡眠による記憶を定着させる段階をおろそかにしてしまっている影響といえます。

やはり、どれだけたくさん勉強しようが、学習した内容が記憶として残らなければ、その努力は学力という結果には結びつかないのです。

続いて【図表3】は、平日にスマホ等を1日「1時間未満」使用する子どもたちの成績を表しています。【図表2】と見比べると、平均以上の成績を表す灰色の棒の数が増えていることがわかります。これは、【図表1】で棒グラフの山の頂点が「1時間未満」にきていたことと、同じ結果を意味しています。