スマホを1日1時間弱だけ使う層の学力が高い理由

グラフはスマホ等を持っているが「全く使わない」、「1時間未満」使用と、緩やかに高くなっています。ここまでの結果を見ると、「あれ? 子どもにスマホを持たせた方がよいのかな?」と、思われた方もいるかもしれません。結果の見方には、少し注意が必要になります。

この結果の説明として、私たちは二つの可能性を考えています。一つは、スマホ等を「持っていない」グループには、経済的な理由で持たせることができないご家庭も含まれている可能性があるということです。悲しい現実ですが、家庭の経済状況と子どもたちの学力には、相関関係があることが明らかになっています。

この点が「持っていない」と「全く使わない」の間の学力の差につながっている可能性があります。

もう一つ、スマホ等の使用が「1時間未満」の学力が高い理由としては、自分の意志で「1時間未満」に抑えられる子どもたちが含まれている可能性があります。楽しくて誘惑の多い魅力的なスマホに依存することなく、自律的に使いこなすことができている。そんな自己管理能力の高い子どもたちが一定数含まれているのではないかと考えています。

そしてグラフは「1時間未満」を山の頂点として、使用時間が長くなるほど、どんどんと学力が低くなっていく様子が見てとれます。このように、1時間以上のスマホ等使用が学力に悪影響を与えていることが明らかになったのです。

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写真=iStock.com/Edwin Tan
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スマホをいじって睡眠時間が短くなるとどうなるか

スマホ等の使用時間が長い子どもたちの学力が低い理由として、スマホ等を使用するために睡眠の時間が削られてしまっているという可能性が考えられます。また、当然のことですが、勉強をたくさん頑張っている子どもたちの方が良い成績を修めていると考えられます。同様の理由から、スマホ等の使用によって勉強時間が削られてしまっている可能性も考慮する必要があります。

まずは、睡眠について考えてみましょう。総務省の「令和3年社会生活基本調査」の結果によると、2021年時点で10歳以上の平均睡眠時間は7時間54分と報告されています。

私たちは、おおよそ1日の4分の1から3分の1程度の時間を睡眠に充てています。生物学的に見ると、睡眠中に分泌される成長ホルモンが重要な役割を果たしていることがわかっています。「寝る子は育つ」という言葉がある通り、このホルモンのはたらきによって子どもたちの身体が形成され、健全な成長へとつながります。

脳科学的に見ても、睡眠には重要な役割があります。睡眠は、浅い眠りと深い眠りを周期的に繰り返すリズムを持っています。浅い眠りをレム睡眠、深い眠りをノンレム睡眠といいます。おおよそ90分間隔で訪れるレム睡眠の間に、私たちの脳は、日中に起きた出来事などの記憶を整理して、定着させるという作業を行なっていることがわかっています。