株式投資をやりたい人には合理的なNISA

これを理解した上で、NISAについてお話ししてみよう。

NISAとは、Nippon Individual Savings Accountの略である。

Individual Savings Accountというのは、世界でもよくある制度であり、個人で株式投資するとき、その収益について非課税枠が設けられる。

何が何でも株式投資をやりたいという人は、非課税枠を利用した方が得であり、合理的なのは間違いない。

ただ、NISAの非課税枠は、「つみたてNISA」は年40万円、「一般NISA」は年120万円に限られる(2024年から始まる「新NISA」では、「つみたて投資枠」で年120万円、「成長投資枠」で年240万円となる。併用可能となるため、合計で年360万円まで投資上限額が引き上がる)。

株式投資によって生計を立てている人にとっては、120万円分などほんのちょっとに過ぎない。さほどのメリットはないが、ないよりは良いという程度だ。新NISAでは非課税枠が広がるが、私の結論としては同じである。

「老後のための保険や投資」に騙されない

基本的に金融機関の言うことは信用しない方が良い。

何度も言うが、金融機関のすすめる投資は特にそうだ。

たとえば一昔前、銀行がすすめるのは預金だけだった。

しかし、2000年以降になると、銀行は系列の証券会社や保険会社の商品を売るようになった。銀行というだけで信用度は高かったから、銀行員のすすめで投資信託を始めたり、保険に入ったりする人も多かった。

「老後は不安だから、今のうちに保険に入っておくのがおすすめですよ」と言われて、みんな信用したのである。

しかし、そうして不安を煽りつつ金融会社がすすめてくる保険のほとんどは、変額保険である。変額保険とは、支払われた保険料を金融機関が投資信託などで運用するものだ。運用次第で、支払われる保険金などの額が変わってくることになる。

厳密にいえば、これは保険ではない。

変額保険は「ほぼ投資信託」

保険とは原則、「補償」と「投資信託」の2つを組み合わせて作られる商品だ。補償性があってこその保険である。変額保険にも最低限の補償機能はあるものの、貯蓄性ではないので、ほぼ投資信託と変わらない。

保険と言いながら、投資のリスクそのものは、保険契約者が負うことになる。投資信託は当然上がり下がりもあって、損することも珍しくない。変額保険は、手数料の高いあくどい投資信託と、たいして変わらないのである。

それなら、自分の銀行口座で地道に積み立てていった方が、リスクを負わずにすむだろう。

編集部註:初出時、変額保険について誤った記載がありましたので訂正します。 (5月16日11時10分追記)