誰が手数料を決めるのか?

現地通貨決済の場合はカード会社によって異なるものの、海外手数料はせいぜい上記にあるように2%前後ですし、この手数料は開示されていますので、透明性は高いです。ところが円決済の場合、使用したお店が為替レートを独自に決めることができるようになっているのです。したがって通常のレートよりもはるかに高いレートが適用される可能性があります。

お店にとってみればユーロ決済ならそのまま自分たちの通貨で受け取れるのに対して円決済だとそれをユーロに両替するわけですから、それまでの間に大きく為替レートが変動するリスクもあるため、少し幅を持たせて決めている、ということなのだと思います。つまりお店が悪意を持って上乗せしているわけではないのですが、中にはそうでないお店もあるかもしれません。その場合、カード会社の手数料率1.6~2.5%よりもはるかに高い手数料率、例えば10%を超えるような率になることもあるようです。

実際にレストランで10.4%の手数料がかかった

事実、私たちが食事したレストランで支払おうと思って見たところユーロなら100ユーロ、円であれば1万6300円と表示されていました。私がパリにいた時のレートは1ユーロ146円ですから単純に考えると10.4%もの手数料がかかっていることになります。もちろんユーロでの決済を選んだことは言うまでもありません。

ディナーの席でグラスに注がれる赤ワイン
写真=iStock.com/wundervisuals
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この場合はたまたま100ユーロというキリの良い数字ですから、大体の為替レートが頭に入っていると、割高だということはすぐわかりますが、これがもっと半端な数字、例えば86とか134みたいな数字だと瞬間的に換算金額は出てきませんよね。ですから円決済ではなく、基本はユーロ決済にしておいた方が良いのです。詳しい人の話によると、中には円決済の方が割安になるケースもないことはないけれど、そういうことはまれで、むしろ損になることの方が多いということです。

旅行から戻ってきてしばらくしてからカードの利用明細が来て、高いことに気が付いてももう時既に遅しです。コロナが一段落して、これから海外で行かれる人も多いと思いますが、カードを利用する場合にどの通貨で決済するかは注意をしたほうが良いと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。