日本では年上男性との結婚が減り、年齢の近い夫婦が増加

これまで見てきたとおり、オーストラリアでは自分よりも若い相手と結婚すると、結婚時点の夫婦関係満足度が高い傾向にあります。しかし、結婚期間が延びるとともに徐々に夫婦関係満足度が低下し、10年で初期の満足度のメリットは消えてしまいます。年の差夫婦が特に幸せなのは、初めの10年といったところでしょう。

残念ながらこの点に関して日本の研究はないのですが、日本の夫婦の年齢差の推移を見ると興味深い傾向が見えてきます。

図表1は1980年、2000年、2021年の初婚夫婦の年齢差を示しているのですが、この図から次の2点が読み取れます。

【図表】初婚夫婦の年齢差の推移

まず、夫が年上の割合は、持続的な減少傾向にあります。2つ目は、同年齢夫婦と妻が年上の割合は持続的に増えており、2021年では妻が年上夫婦の方が同年齢夫婦よりも多くなっています。今では妻の方が年上であるケースは、珍しいものではありません。

次の図表2はより詳細に初婚夫婦の年齢差の構成比をみています。2021年の値を見ると、最も大きいのは夫婦が同年齢の場合であり、2番目に大きいのは夫が1歳年上の場合、そして、3番目に大きいのは妻が1歳年上の場合でした。これら上位3つを合計すると、46.6%となり、約半分を占めています。

【図表】初婚夫婦の詳細な年齢差の推移

この結果と図表1の結果を総合すると、年上男性との結婚が減り、そのぶん年齢層の近い男女で結婚が発生しやすくなっていると言えます。

年齢の近い夫婦の増加は性別役割分業意識の変化の表れか

日本では趨勢的に年齢層の近い夫婦が増加しているわけですが、これは興味深い動きです。というのも、夫婦の年齢差に性別役割分業に対する考えが反映されている可能性があるためです。

ワンシェン・リー准教授とテラ・マッキニッシュ教授の研究では、夫婦の年齢差によって性別役割分業に対する考えがどう異なっているのかという点も検証しています。この結果を見ると、夫の年齢が妻よりも4歳以上高い夫婦ほど、「男性は仕事、女性は家事・育児」という考えを持つ割合が高く、同じ年齢の夫婦ほど、その割合が低くなっていました。

ワンシェン・リー准教授らの分析を考慮すれば、日本における年上男性との結婚減少および年齢層の近い夫婦の増加は、「男性は仕事、女性は家事・育児」という性別役割分業意識の変化を示唆している可能性があります。

掃除機をかける夫とソファで休んでいる妻
写真=iStock.com/Yagi-Studio
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ただし、諸外国と比較して日本の性別役割分業意識は依然として強く、女性の就業や出産・子育ての阻害要因になっていると指摘されています。このため、今後さらなる性別役割分業意識の解消が求められます。この解消の度合いを測る指標の一つとして、夫婦の年齢差が活用できるかもしれません。

(*1)Lee, WS., McKinnish, T. The marital satisfaction of differently aged couples. J Popul Econ 31, 337–362(2018).
(*2)0~10の11段階で夫婦関係満足度を計測しており、夫婦が同年齢の場合と比較して、1歳年下の妻を持つと0.03ポイントほど夫婦関係満足度が上昇していました。また、1歳年上の妻を持つと0.04ポイントほど夫婦関係満足度が低下していました。
(*3)妻の場合、1歳年下の夫を持つと0.04ポイントほど夫婦関係満足度が上昇し、1歳年上の夫を持つと0.03ポイントほど夫婦関係満足度が低下していました。
(*4)永井暁子(2005)「結婚生活の経過による妻の夫婦関係満足度の変化」『季刊家計経済研究』 66, 76-81.

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。