「ヨソもの」会長は1年でいなくなった

PTA会長の選出方法も「ザ・昭和」でした。前会長(もちろん父親)が次期会長(やはり父親)を「ご指名」するのですが、このとき候補にあがるのは「代々この土地に住んでます」という地元民限定です。

一度会長になったら、子ども全員が卒業するまでは何年でも続ける、というのも暗黙のルールでした。

「私が知る限り、何年か前に珍しく『ヨソもの』が会長をやったそうなんですが、やはり1年でやめたそうです。周囲にやめさせられたのか、本人が嫌になってやめたのかわかりませんが、とにかく苦労したらしく。それくらい『土着の人』じゃないと、うまくやれないみたいですね」(光世さん)

バリバリのワーママ役員が反旗を翻した

一昨年度、そのPTA会長がようやく交代することになりました。それまで4年ほど同じ父親が会長をやっていたのですが、その子どもが卒業したからです。

これが悲劇の始まりでした。次に会長になった男性は、「極端に何もできないのに、やたらと威張るタイプ」だったのです。

まもなく、実務を担う本部役員の母親たちが一人残らず怒り出しました。

「会長さんは代々ここに住んでいる方で、家業や不動産の収入があるから、ワードやエクセルを使う一般的なお勤めをされたことがないらしいんです。メールやLINEを送っても話の要点を理解できなくて、会長が判断を求められている内容でも、一切返事をせずに読み流してしまう。

一方、母親たちは働いている人ばかりで、しかもこの辺りに住むのにはそれなりにお金がかかるから、いい会社でバリバリやっている方が多い。そのお母さんたちと、PTA会長のお父さんの温度差が、非常に激しくなってしまって。なのに、その会長さんは『わからないことは全部俺に聞きに来いよ』みたいな態度を取ったもんだから……」(光世さん)

こりゃダメだ、と見切りをつけたワーママのひとりが「次年度は私がやります」と会長に立候補したのは、ごく自然ななりゆきでした。

マイクで話すPTAの女性
写真=iStock.com/takasuu
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