従来の「男性的な」政治こそが問題の本質

ただし、男性の中にもそうした男性政治を拒否する人はいますし、逆に女性の中にも男性政治に迎合し自ら組み込まれようとする人もいます。ですから、単純に女性の数が増えればいいというものではないのですが、それにしても今は少なすぎます。日本は女性の地方議員を増やしつつ、市区長や知事、そして国政に女性の政治家を増やしていかなければなりません。

女性が全体の4〜6割にまで増えてくれば、発言者が男性であろうと女性であろうと個人の意見として捉えられるようになり、多様性のある新しい政治を実現しやすくなるでしょう。

よく「集団内での割合が3割を超えると意見として認められやすくなる」と言われますが、今の男性政治を壊すには3割ではまだ無理です。そして、5割で頭打ちと考えず半数を超えていく局面もあっていいでしょう。

これを実現するには、当然「ケアなし女性」だけでは足りません。家事や育児などのケアを担っている人も含めて多くの女性に参入してもらう必要があり、それを可能にするような新しい選挙文化が必要なのです。

2023年4月16日、東京都調布市内。市議会議員選挙の掲示
撮影=プレジデントオンライン編集部
2023年4月16日、東京都調布市内。市議会議員選挙の掲示

組織力で決まる選挙のままでは女性議員が増えない

選挙で当選するには、現実的には組織力が必要です。こうした力を持つ組織は、今の日本ではほぼ男性の集団しかありません。組織力がモノを言う選挙文化を社会全体で変えていくべきだと思っています。

女性候補者が組織の外にいる有権者を取り込むことができれば、政治のダイナミズムは大きく変わります。そのためにも、議員の「なり手」だけでなく、支援者や選挙ボランティアなどの「支え手」にもどんどん女性が入っていってほしいですね。

選挙ボランティアに興味があっても、何となく尻込みしてしまう、どうしたらなれるのかわからないという女性も多いかもしれません。確かに国政選挙は政党色が強いので少しハードルが高いですが、地方選挙なら無所属の候補者もいるので、初めての人でも入りやすいのではないでしょうか。

支え手になる理由も、身近なことから考えていくといいと思います。保育園のオムツ持ち帰りに反対の声を上げてくれたとか、駅前の木を伐採せずに残してくれたとか、そうした「暮らしをよくしてくれた」という体験を基に、気軽に支え手に加わってもらえたらと思います。

地方議員は、私たちの暮らしをいい方向へ変えてくれる存在です。自分が応援した候補者が議員になり、実際に暮らしが変わった──。そうしたことを経験する女性が増え、その経験を周囲と共有してくれたら、きっと女性議員の増加につながっていくはずです。組織の外にいる女性同士がつながり、女性候補者を押し上げるネットワークをつくっていくことが大事なのです。