なんでもかんでも学び直せばいいわけではない
ただ、なんでもかんでも理解できていない単元に戻ればいいというわけではありません。
とくに中学受験を目前に控えていると、できない部分ばかりに目がいって、「あれも覚えていない! これもわかっていない!」と慌ててしまうものです。
過去に習ったことをすべて完璧に身につけている子どもはいません。正直にいって、「できないこと」を気にしだしたらキリがないのです。
前述したように、影響の大きい分野は学び直しが必要ではありますが、どの単元なら学び直したほうがいいのかは、保護者では判断が難しいこともあるでしょう。
以前学習したところがあまりに身になっていないと感じた場合には、小学校の先生や塾の先生に相談をしてみるのも一つの手です。プロと一緒に対策を練っていくことで、戻るべきところには戻るという決断ができます。
不正解が怖い子は算数が伸びにくい
「算数が得意」というと、天才的なひらめきをもっている子をイメージするかもしれませんが、決してそれだけではありません。
ゲーム感覚で楽しめる子は算数を楽しんで解けるようになる傾向があります。失敗を恐れるのではなく、「間違えたらもう1回やってみよう」と思える子は、算数が得意になることが多いのです。トライ・アンド・エラーする力を身につけている子といえるかもしれません。
一方で、「間違えたくない」と思って手が止まって動けなくなる子は、算数の問題を解き進められないケースがでてきます。「この道を歩めば絶対に頂上まで行けるよ」というルートがはっきりしないと歩き始められないタイプは、算数に苦手意識をもちやすいといえるでしょう。
また、「ゲームだ」ととらえると、算数の問題に対して「なんでこういうルールになるの?」「こんな状態、絶対に起きないじゃん」といったことに子どもが引っかかりにくくなります。
たとえば、「分数の割り算は、なんでひっくり返して掛け算するのか?」と思ったことはありませんか? この質問に対する答えをすごくシンプルにいうと、「そういう決まりだから仕方がない」ということになります。
ほかにも、「時速60キロで3時間進みました」といった文章題があるときに、「その速さで走れるわけないでしょ」「ずっと同じ速度のはずないよね」といったことに引っかかってしまうと、問題を解く手が止まってしまいます。
「こんなことあるわけないじゃん」とどこかで思っていたとしても、「ゲームだし」「こういうルールなんだな」と客観的にみられると、すんなりと取りかかることができるようになります。
横浜国立大学大学院教育学研究科修了。中学校・高校の教員免許を取得。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーション教育研究開発センターにて、教育情報誌の制作を行う。現在は教育現場の情報をわかりやすく伝える教育ライターとして活動中。著書に『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(共著/翔泳社)がある。