チームの円滑なコミュニケーションを推進するには何が必要だろうか。トヨタの豊富な現場経験を活かし、リーダーとなるコア人材を育てるOJTソリューションズは「メンバーにとって、リーダーからの挨拶や声掛けの効果は絶大で、決してあなどってはいけないものだ」という―――。

※本稿は、OJTソリューションズ『トヨタリーダー1年目の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

給与明細と現金と電卓
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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挨拶は円滑なコミュニケーションを取るための第一歩

トレーナーの生駒正一は、トヨタ時代にポーランドの工場で現地のチームリーダーの自立化支援に携わっていました。

そこでは、生駒が現地のチームリーダーに仕事を教え、そのチームリーダーが自分たちのグループのメンバーに伝え教える形態をとっていました。

このプロジェクトにおいて、生駒が必ず定着させたいと考えていたのは、「コミュニケーションとチームワークを大切にすること」だと言います。

「コミュニケーションがまともにとれない状態では、相手のレベルや特性を踏まえて仕事を教えるステップに進めません。

また、チームワークがなければ、補いながら一丸となって成果を出すことも難しいです。仕事をしていく前提としてあるのが、コミュニケーションとチームワークなのです。

トヨタの班長は、5〜8人のメンバーをまとめます。課長になれば、約300人の部下を抱えることになりますが、リーダーとしてのポジションが変わっても、挨拶と声かけが大事なことは変わりません。なぜなら、自分の部下と気軽に言葉を交わせない関係では、お互いの考えも伝わらず、日々の問題解決や目標達成への協力が得られないからです」

コミュニケーションやチームワークづくりと聞くと、何やら難しそうですが、いずれも“挨拶”と“声かけ”によって実現できるものだったのです。

リーダーから挨拶するだけで、職場は変わる

そうは言っても、「挨拶したり声をかけるだけで、そんなに効果が出るのだろうか?」と考える人もいるでしょう。

生駒は、挨拶や声かけには、「話すためのきっかけづくり」という効果があり、良好なコミュニケーション構築の糸口になるのだと言います。

「私が新人の頃、周囲の先輩から『今度のボーナスがいくらなのか、課長に聞いてみるといいよ!』と担がれたことがありました。当時の課長職というのは、今よりも威厳があって、近寄りがたい存在でした。

私はまんまと先輩たちの口車に乗せられて、本当に聞いてしまったのですが……。課長も思わず笑ってしまい、ありがたいことに、場は和みました。ただ、そもそも、新人の私から課長に話しかけることができたのは、日常的に、課長から私に、挨拶や声かけをしてくれていたからなのです」