泰然とした親の態度で子どもに良い影響を

お受験は、可愛い我が子の将来の幸せを願う親心から熱心に取り組むご家庭が多いだけに、万が一、上手くいかないと、こんなに頑張ったのに、何がいけなかったのだろうと悔んだり、自分の不甲斐なさを責めたりと、深く落ち込んでしまいがちです。

しかし、忘れてはならないのは、お受験で一番頑張ったのはお子さんだということです。きっと、小さいながら体力的にも精神的にもギリギリのところまで頑張ってきたのではないでしょうか。親として、残念な結果をすぐには受け止められない気持ちは痛いほど分かりますが、お子さんが、「自分のせいで大好きなママを悲しませてしまった」と自分を責めることがないように、お子さんの前ではあまり落ち込む姿を見せず、気丈に振る舞っておきたいものです。

また、親から先生への愚痴を聞かされると、さらに辛くなってしまうので、お子さんの前では、「なんでうちの子が……」「塾は合格させるのが仕事でしょ!」などといった、塾やお教室の先生への愚痴も慎みましょう。それよりも頑張ってきたお子さんには、結果はどうあれ「よく頑張ったね、お疲れ様、最後まで偉かったね」と、いたわりや承認の言葉で温かく包み込んであげたいですね。そして「ママは○○ちゃんが元気でいつも笑顔でいてくれるだけで幸せよ」と言ってぎゅっと抱きしめて存在を承認してあげましょう。お子さんの人生はまだはじまったばかり。どんな時でも親として泰然とした態度で、子どもの気持ちを優先して考えられる余裕をもっていたいものです。

受験は親子が成長する機会に

私事ですが、数十年前に私自身中学受験をしたのですが、あいにく不本意な結果で落ち込みました。ところが両親はその結果を取り立てて気にする様子でもなく、むしろ結果的に入学することになった学校について、毎日とても楽しそうに話してくれました。そんな親のおかげで、当初落ち込んでいた気持ちも吹っ切れて希望を抱いて入学し、恩師や生涯の親友にも恵まれました。まさに「人間万事塞翁が馬」です。

時が経ち、今は子を持つ親として自分の未熟さを痛感することも多く、子育てをしているつもりが、実は親として子どもに育てられているというのが実感です。

今回は、先生へのお礼のあいさつをどのように伝えるかを取り上げました。相手との関係性などにもよりますので考え方はさまざまですが、どうしようか迷った際に、少しでも参考になれば幸いです。お受験はまさに親子で成長する機会かもしれません。どんな結果であっても、お世話になった方への感謝の気持ちを大切に、そして、お子さんの心に温かい言葉で栄養を与えて、花を咲かせる日が訪れるのを信じて見守りましょう。

阿隅 和美(あすみ・かずみ)
WACHIKAコミュニケーションズ代表

青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、TV現場で培った技術を活かし、ビジネス現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っている他、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施している。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。ホームページ