なぜ今年なのか…
年初(1月4日)、小池都知事が、少子化対策として子ども1人当たり月額5000円給付案を発表した直後、岸田首相が「異次元の少子化対策に挑戦する」と宣言した(友人から、「異次元ってどういう意味?」と聞かれて即答できなかったが)。
少子化と言われて長い時間が経過しているのに、なぜ、今年なのか、ということについてまず考えてみたい。
少子化を表す数字には、2種類ある。一つは、女性1人当たりが産む子ども数の目安である「合計特殊出生率」、もう一つは、実際に産まれた子どもの数、つまり「出生数」である。
合計特殊出生率の低下は、1990年に「1.57ショック(1989年の合計特殊出生率)」という言葉が作られ、1993年に1.5を割り込んで以来、1.26(2005年)を底として低空飛行が続いている。人口が長期的に維持されるためには、女性1人が女性1人を産み育てることが必要なので、2.1が基準値になっている(自然出産では男性の方が多く生まれるため)。そういう意味で言えば、少子化はもう30年以上続いている。確かに2021年は、1.30で、2022年はそれを下回りそうではあるが、近年とりたてて低くなったわけではない。
出生数急減という緊急事態
しかし、もう一つの目安である「出生数」を見てみると、政府の心配の種が理解できる。少子化と言われながらも2000年頃までは、産まれる子どもの人数自体はそれほど変わらなかった。それは、人口規模が大きかった団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ、年約200万人出生)が出産期にあったからである。今世紀に入ってから出生数減少が顕著になり、2000~2010年の間に12万人、2010~2020年の間ではなんと23万人と減少が加速した。20年前の3分の2しか子どもが生まれていない。
そして、2022年の出生数は77万人程度になる見込みである。つまり、2年で7万人減と減少率が拡大している。