西欧は「両立支援」という少子化対策をとってきた

少子化は、日本だけの現象ではない。

西ヨーロッパの多くの国では、1970年代を通じて少子化が進んだ。その大きな理由は、「男性1人の収入では子どもを多く育てるには不十分」であり「女性が働いて家計を支えたくても条件が整っていなかった」という点にあった。欧米でも1960年代までは、「専業主婦」家庭が大部分を占めていた。しかし、ニクソンショック、石油危機後の経済不況や女性の職場進出のため、1975年以降、少子化が起きる。

そして、いくつかの国々(フランスやスウェーデンなど)では、保育所整備、児童手当、育児休業制度、男性の育児参加推進など「女性が働きながら(共働きでもシングルマザーでも)子育てができる仕組み」を作り、社会保障を充実させることによって、少子化に一定の歯止めがかかった。これを「両立支援」と呼ぼう。

日本は、1970年代に第2次ベビーブームが起きていたので、出生率が多少低下しても、ヨーロッパの少子化は対岸の火事くらいにしか思っていなかったのだろう。1980年代までは社会問題となることはなかった。

床に散らばった赤ちゃんのおもちゃ
写真=iStock.com/Hiroko Yoshida
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欧米とは違うタイプの少子化が進んでいる

冒頭で示したように、1990年頃から合計特殊出生率の低下が顕著になる。しかし、その要因は、欧米のように単に「女性が子どもを育てながら働く環境が整っていないから」だけではない。それは、日本に続いて少子化が起きている東アジア諸国の状況をみればわかる。

今世紀に入ってから、香港、シンガポール、台湾といった国、地域の少子化が進む。これらの国、地域は、外国人メイドを安く雇うことができるなど、「共働きがしやすい」といわれている。また、近年は、それに加えて韓国と中国の少子化が著しい。韓国では、ここ2年、合計特殊出生率が0.8と、1を割り込むほどに低下した。

日本や東アジアでは、欧米とは異なったタイプの少子化が進んでいる。これこそ、ヨーロッパ諸国とは異なった「異次元の少子化対策」が求められる本当の理由である。