NISAの注意点2つ

1.株式などの短期売買には向かない

確かにNISAは利益が出ても税金がかからないというメリットは大きいのですが、逆に損をした場合はどうなるでしょう。通常、有価証券の売買損は他の有価証券の利益と相殺することができます。他に儲かっている株式等があれば、今回損をした分をその儲けから引くことができる、いわゆる「損益通算」という制度ですが、NISAの場合はそれができません。

短期で売買すると株価が下がった場合、早い時期に見切りをつけた方が良いこともしばしばありますが、その場合はまるまる損失として計上されますので、不利です。したがって株式等の短期売買には向かないと考えた方が良いでしょう。

2.少しでも勉強してから始めること

これも重要なことです。最近は「簡単、お気楽」とばかりに安易に投資を勧める風潮がありますが、投資は決して甘いものではありません。特に長期投資の場合、途中で何度も暴落を経験します。価格が上下するメカニズムや、例え投資信託であったとしても自分がどういう種類のものに投資しているのかをきちんと理解しておくことが欠かせません。

このようにiDeCoとNISAは似ている部分はあるものの、そもそも全く異なる制度ですから利用方法や留意点なども異なります。その辺を誤解し、混同しないようにすることが大切です。それぞれの資金の性格や目的に合った利用法をしていただきたいと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。