週に1度でも白い肉や代替肉を

このような背景から、欧米諸国では必ずしも個人の健康のためというわけではなくても、ベジタリアンやビーガンなどの嗜好を持つ人が特に若者を中心に増える傾向にあります。

山田 悠史『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)
山田 悠史『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)

また、産業界でも、Beyond Meatのように、代替肉(フェイク・ミート)を開発する企業も増えてきました。私が住むニューヨークでも、チェーン店のドーナッツ屋やハンバーガーショップなどでは、必ずといっていいほどフェイク・ミートのオプションがあります。

牛乳にも、Oatlyのようなオートミルクやアーモンドミルクへの置き換えが進んでおり、これらもコーヒーショップなどで見かけることが多くなりました。もはやOatlyを置いていないスーパーを見つける方が難しいというぐらい、ニューヨーク市内ではOatlyも急速に浸透しています。

私自身何度か試してみたことがありますが、フェイク・ミートもオートミルクも味が良く、料理の一部として食べている分には牛肉や牛乳などとほとんど区別がつきません。

これらの食品はこれからさらに浸透し、食品の主流になっていくかもしれません。少なくとも私の住むニューヨークでは、すでにそれぐらい日常生活に溶け込んできています。

赤い肉や加工肉を食べる習慣がある人は、週に1食でも白い肉や代替肉に変えてみる。その一歩が、病気のリスクをわずかかもしれませんが減らし、ひいては地球の健康を守ることにもつながる。そんな風に考えることができそうです。

肉の中でも、いわゆる「赤い肉」や加工肉には、発がん性や心臓・血管の病気のリスクとの関連が知られています。肉は多くの人にとってタンパク質の重要な摂取源の一つですが、「白い肉」や代替肉がより健康な置き換えになるのかもしれません。

(注4)Chan DSM, Lau R, Aune D, et al. Red and processed meat and colorectal cancer incidence: meta-analysis of prospective studies. PLoS One 2011; 6: e20456.
(注5)Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, et al. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol 2015; 16: 1599–600.
(注6)Wolk A. Potential health hazards of eating red meat. J Intern Med 2017; 281: 106–22.
(注7)Xu X, Sharma P, Shu S, et al. Global greenhouse gas emissions from animal-based foods are twice those of plant-based foods. Nat Food 2021 29 2021; 2: 724–32.
(注8)Cows and climate change | UC Davis.(accessed Nov 5, 2021).
(注9)COWSPIRACY: The Sustainability Secret. (accessed Nov 5, 2021).

山田 悠史(やまだ・ゆうじ)
米国老年医学・内科専門医

慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。2015年から米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院の内科、現在は同大学老年医学・緩和医療科アシスタントプロフェッサーとして高齢者診療に従事。フジテレビ系列「FNN Live News α」のコメンテーター、ニュースメディア「NewsPicks」などで活躍するほか、コロナワクチンの正しい知識の普及を行う一般社団法人コロワくんサポーターズの代表理事、カンボジアではNPO法人APSARAの常務理事も務める。著書に『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)がある。